所長ブログ

2013年3月21日 木曜日

[書評]伊藤真 伊藤真の行政法入門(日本評論社)

久しぶりに一冊、書評をしたいと思います。(本記事は書評なので、ここからは、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)

今回、取り上げる伊藤真の行政法入門の著者は、弁護士で、伊藤塾の塾長である。この、「伊藤真の~法入門」は、シリーズもので、行政法を含めて8冊が刊行されている。このシリーズは、著者の講義を書籍化したものであるが、当職も、司法試験の勉強を始めた16年前、伊藤塾(当時は、「伊藤真の司法試験塾」という名前であった)で、著者の講義を受けた。その「体系マスター」と呼ばれていた部分(今は、何と呼ばれているのかは知らない。)を書籍化したのが、この「伊藤真の~法入門」というシリーズである。ただ、当時の司法試験では、行政法は必修科目ではなかった(1999年までは選択科目となっていたが、2000年に廃止された。現在の司法試験では必修科目となっている)ので、行政法の講義はなく、「伊藤真の行政法入門」にあたる部分の講義は聞いたことはない。

このシリーズ全体に共通しているのは、本当に幹の部分だけが、優しく丁寧に述べられており、この本を読んだだけで行政法が分かるものではないが、この本が分からなければ、他のどんな本を読んでも、あるいは、講義を聞いても、はっきり言えば、時間の無駄である。その位、このシリーズは優しく書かれている。

今回、当職が、この本を読もうと思ったのは、弁護士として実務に出ると、個々の問題については、確かに詳しくなるが、全体像を勉強する機会が乏しいということがある。例えば、外国人法律問題では重要な法律である出入国管理及び難民認定法は、行政法の一分野で、当然、この分野の知識は身につけている(そもそも、身についていなければ、「外国人法律問題」の専門家と名乗る訳には行かない)が、行政法の全体像ということになると、身についていないと感じることになるわけである。ただ、全体像が身についていないと応用が利かないという面もあるので、全体像を押さえておこうと思い(半分は、書店で見て16年前を懐かしく思った面もあるが)、この本を読んだ。特に、行政法は、行政事件訴訟法や行政手続法などの「通則的な法律を取り込みながら、法典が定められていない部分を理論で補った条文と理論の統合体」(5頁)であり、「学ぶのは行政法理論」(166頁)になる点で、憲法や民法の学習とは少し勝手が違う面があり、このような平易な本が出ているのは、ありがたいと思う。

この本も、シリーズ全体と同じく、科目の全体像を含む学習スキルとどのように考えたら良いかという学習スピリットがきちんと押さえられた本で、この後、どんな本を読むにしても、あるいは、講義を聞くにしても、最初に読んでおくべき本であるし、また、当職のように、個々の話は知っているが、全体像を押さえていない人が役に立つ良書であろう。ただ、この本を読んだだけで、行政法が分かるということはないのはもちろんなので、例えば、法学部生や法科大学院生、試験勉強などで、行政法を丁寧に学ぶ必要のある人は、この本を理解した上で、もっと詳しい本にチャレンジして欲しいと思う。

この書評を読んで、伊藤真の行政法入門を読んでみたいと考える方がいらっしゃれば、本当にうれしく思います。

また、印象に残る本に出会ったら、書評も書きたいと思いますので、その時も読んでいただければ幸いです。

林浩靖法律事務所
弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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