所長ブログ

2016年2月29日 月曜日

[書評]新公益法人制度研究会編著 一問一答 公益法人関連三法(商事法務)



1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「一問一答 公益法人関連三法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、平成18年に一般法人法等が成立した際に、立法担当者が新たに制定された同法を解説した書物である。既に制定から8年、施行からも6年が経過しているが、現時点で、一般法人法や公益認定法について、この書物より詳細に説明している書物は、当初の知る限りない。その意味で、現在でも、この分野を調べたいときに役に立つ書物である。一般法人法の概要は、民法の基本書にも記載されているが、細かい話になると、現在でも、この本が一番頼りになるという状況である。

一般法人法等は、「改正前民法に基づく社団法人及び財団法人についての許可主義を根幹とする主務官庁制を廃止し、法人格の取得と公益性の判断を分離するという基本方針の下、①剰余金の分配を目的としない社団又は財団について、準則主義により簡便に法人格を取得できる一般的な法制度を創設し、②この一般社団法人または一般財団法人のうち、公益認定の申請をした者の中から...公益を認定する事業を適正に実施し得る公益法人を認定する制度等を定め」た(はしがきⅲ頁)たものであるが、その機関設計は、準則主義を採用したこともあり、かなり会社法の規律に類似しており、果たして、剰余金の分配を目的としない社団又は財団についての制度として適切なのかと疑問を感じるところはあるが、この書物は、学者による基本書ではなく、あくまで立法担当者による解説なので、そのような根源的な疑問には答えてくれるものではない。
しかしながら、制度の解説という意味では、詳細なことは確かであり、その意味では、頼りになる書物である。

林浩靖法律事務所では、常に最新の情報をキャッチアップするとともに、周辺分野も含めて知識を深めるように、日々、研鑚に努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年2月22日 月曜日

[書評]伊藤真監修・伊藤塾著 伊藤真実務法律基礎講座5 民事執行法・民事保全法(弘文堂)



1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「伊藤真実務法律基礎講座5 民事執行法・民事保全法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の監修者・著者は、以前、書評をした「伊藤真の条文シリーズ3 会社法[第2版]」(該当する記事は、こちら)と同じであり、本書も同じく弘文堂から出版されている。

本書は、実務に出るとオン・ザ・ジョブトレーニングが中心になるが、その経験が価値あるものになるようにするために、法律の全体像をつかむことを目的とするシリーズの民事執行法・民事保全法である。「設例、確認問題、図表、各種書式などを多く示すことにより、具体的なイメージを持って理解できるように工夫」(はしがきⅢ頁)している。民事執行法・民事保全法の書物では、設例、図表や各種書式を掲載している書籍は一定数みられるが、確認問題まで掲載しているのは、さすが受験指導校が作成した書物と思える点である。確認問題の掲載は民事執行法に限られるが、理解度を確認しながら読み進めることができ、「民事執行法・保全法を専門的に勉強する際の基本書への橋渡しとしての役割」(はしがきⅢ頁)を果たすことができるように工夫されている。

ただ、惜しむらくは、以前書評をした中野貞一郎名誉教授の「民事執行・保全入門(補訂版)」(該当する記事は、こちら)と同じく、民事保全法の記載が薄すぎることである。ただ、この点は、民事保全法をきちんと記載している書物の方が少ないので、基本書を参考に書籍をつくっている受験指導校が作る以上、仕方ないと割り切るしかないであろう。

先週も述べたように、民事執行・保全は、処理の正確性が要求されるものの、細かい問題が多く、しかもイメージは沸きにくいという怖い分野です。林浩靖法律事務所では、きちんと問題点を把握して、万全の処理を期しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年2月15日 月曜日

[書評]水野丈夫・浅島誠共編 シグマベスト 理解しやすい生物[生物基礎収録版](文英堂)



1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「シグマベスト 理解しやすい生物[生物基礎収録版]」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は高校生用の学習参考書であり、以前書評をした「シグマベスト 理解しやすい政治・経済」(該当する記事は、こちら)と同じシリーズである。編者の両名は、東京大学名誉教授であり、記述のしっかりしている書物である上、図表も多く、基礎から発展までカバーしているので、高校生物を復習する上では、使いやすい一冊である。はしがきでは、「原理もわからず、ひたすら『覚えよう』とするのはおろか」(1頁)と述べて、読者に「生命現象をよく『理解する』ようにしてください」(同1頁)と述べる。

実際、丁寧に説明されており、情報量も相当に多く、「理解」させることに努めている書物ではある。高校生時代、生物を選択しなかった当職でも通読することはできた。ただ、本書は、「章末には『章末練習問題』を、編末には『定期テスト予想問題』を入れて、これを解くことで学習内容の理解度を自己診断できる」(2頁)としているが、収録されている問題数は少なく、基本的には、理解用、あるいは、辞書用に使う知識系の参考書であり、問題集は、レベルに応じたものを、別途、使用しないとなかなか定着しないだろう。

そうはいっても、知識の説明はしっかりしている良書だと思う。バイオテクノロジーの説明(296頁)など、実社会との関係も説明されている。

高校生のときには感じませんでしたが、社会に出ると、高校生レベルの知識は、全分野、きちんと身につけておけばよかったと感じることがあります。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、そのバックグラウンドを押さえて業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年2月 8日 月曜日

[書評]中野貞一郎 民事執行・保全入門(補訂版)(有斐閣)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「民事執行・保全入門(補訂版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、フリーライターであり、先週、書評をした「民事執行法」(該当する記事は、こちら)の共著者の一人である。

「民事執行・民事保全の『入門』であって、いわゆるファースト・ステップの本ではない」(はしがきⅱ頁)とされる本書は、ケースや図表も織り交ぜながら、民事執行法・民事保全法を説明する書物であり、体系書であり、正確だが堅い記載の「民事執行法」とは異なり、イメージがわくように工夫されている書物である、著者である中野名誉教授は、司法修習5期で実務についても基本的な部分を押さえていらっしゃる先生で、「民事執行・民事保全の領域では、学説は実務に対して常に謙抑でなければならない」(はしがきⅱ頁)とされつつも、民事執行法については、最も信頼できる書物を書かれる先生と言える。本書は分かりやすく、イメージがわくようにしつつ、正確性を犠牲にしていない、正に最良の入門書と言える。
ただ、惜しむらくは、これは、他の「民事執行・保全法」の書物と同じく、民事保全法に関する記述が薄いことである。7割程度が民事執行法の話で、民事保全法の説明は、申し訳なさげについている。本当は、ここももう少し丁寧に説明してもらえると、より良かったとは思う。

民事執行・保全は、処理の正確性が要求されるものの、細かい問題が多く、しかもイメージは沸きにくいという怖い分野です。林浩靖法律事務所では、きちんと問題点を把握して、万全の処理を期しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年2月 1日 月曜日

[書評]中野貞一郎・下村正明 民事執行法(青林書院)

1冊、書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「民事執行法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本は、中野貞一郎大阪大学名誉教授と下村正明関西大学法科大学院教授の共著である。

中野名誉教授が、以前、現代法律学全集の第23巻として出されていた「民事執行法」の新版であるが、中野名誉教授の基本書は、民事執行法の数少ない体系書と言える書物であった。民事執行法は、その性格もあり、民事執行法成立直後に出された体系書を除けば、民事保全法も含めた学生向けの教科書と実務の取り扱いを説明する実務書は多いものの、体系書は、ほとんどなく、さらに、民事執行法単独の体系書に至っては、近年は、中野名誉教授のものしかないという惨状であった。

その中野名誉教授の基本書が、今回、装いを新たに下村教授との共著として出版された。中野名誉教授は、そのはしがきで、「今日、それを見上げて、今後も継続しながら、独立に、『民事執行法』の全てを追求してゆかなければならない」(ⅰ頁)と述べているが、今後は、下村教授が改訂を続けていくのだろう。民事執行法は、実務色の強く、また、経済情勢に大きく影響を受けざるを得ない分野なので、今後も、法改正もありえ、また、重要な判例も現れるであろう。中野名誉教授の基本書を下村教授が改訂を続けてくれれば、今後とも、民事執行法の最新の体系書の地位を保ちつづけてくれるだろう。そして、体系書の少ない民事執行法という分野にあっては、中野名誉教授の基本書のような定評のある体系書が今後とも最新の事情を反映した基本書であり続けることは本当にありがたいことである。

民事執行は、民事訴訟を実効あらしめるために大変重要なものであり、弁護士の仕事において、件数こそ多くないものの執行が必要になった場合、その処理を誤ると依頼者に回復不能な損害を与える危険性があります。林浩靖法律事務所では、実務書だけでなく、体系書もきちんと確認して、万全の処理を期しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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