所長ブログ

2016年11月28日 月曜日

[書評]安藤達朗(佐藤優企画/編集/解説、山岸良二監修)いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編(東洋経済新報社)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、元駿台予備学校講師であり、評判の高かった受験参考書を、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏が企画して、復刊した書籍である。

本書は、「できるだけ詳しい記述を行う一方で、歴史の流れや動きの大筋を見失わせずに統一的に理解させる」(13頁)という方針で書かれている。受験参考書として作成されたものであるから、分量の制約があり、また、大学入試で問われる情報を網羅する必要がある。ただ、そのために情報の羅列になることが多い中で、本書は、歴史の流れを押さえ、理解させるように書かれている。
例えば、鎌倉時代について、「鎌倉幕府が関東御料を財源とし、将軍家が知行国主であったことは、幕府が貴族・寺社とかわらない大荘園領主で、古代国家の権力とそれほど違わない性格を持つことを示すものであった。しかし、幕府と地頭である御家人との間には強い主従関係が成立し、御家人がその所有する武力で所領の在地支配を強化し、封建領主として成長しつつあったことは、やはり新しい社会が来つつあることを示すものだった」(159頁)と指摘されている。
このような指摘があるから、時代の流れを押さえることができ、雑多な情報ではなく、体系だった知識になる。本書は、まぎれもない良書である。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、そのバックグラウンドを押さえて業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年11月21日 月曜日

[書評]清野智昭 中級ドイツ語のしくみ(白水社)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「中級ドイツ語のしくみ」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、千葉大学准教授であり、NHKのドイツ語講座の講師もされていた方である。

外国語学習のための参考書は、入手のしやすさにかなりの違いがある。勿論、一番手に入りやすいのは、英語である。英語なら、入門レベルから上級レベルまで日本語での参考書が本屋で探せば手に入る。次に入手しやすいのは、中国語とフランス語で、中級レベルまでは日本語での参考書が比較的揃っているが、上級の日本語での参考書を入手するのはかなり難しい。ドイツ語の場合は、入門レベルから初級レベルまでは比較的日本語での参考書が揃っているが、中級レベルになると日本語での参考書を入手するのはかなり難しくなる。本書は、「初級文法を一通り終えた方、あるいは長年ドイツ語を勉強していても何かすっきりとわかった気がしないという方を対象としたドイツ語文法の解説書」(3頁)であり、ドイツ語では珍しい中級レベルの日本語での参考書である。

「ドイツ語と日本語の否定の一番の違いは、ドイツ語では名詞自体を否定できるということ」(53頁)、「『時間-理由-様態-場所』の語順が確率的に多い」(55頁)、「ドイツ語の名詞には『性』、『数』、『格』の情報が常に内包され」ている(134頁)など、初級段階ではやっているはずなのに、意識できていないことや明確に説明されていないことを明らかにする説明がなされており、非常に有益な書物である。

外国語学習には、その外国語を学ぶということの外に、日本語を見つめ直すという部分があります。そして、弁護士は、意味のはっきりする日本語で書面を書く必要のある仕事です。

林浩靖法律事務所は、基本的な能力もきちんと向上させることを怠らずに業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年11月14日 月曜日

[書評]高木多喜男 担保物権法(第4版)(有斐閣法学叢書)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「担保物権法(第4版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、神戸大学名誉教授であり、本書は、担保物権法に関する信頼できる体系書という評価が長年されてきた書物である。

「金融を媒介する担保制度は、金融取引が要求する新しい需要に照応して、絶えず変動」(はしがきⅲ頁)ので、民法においては、比較的、改正の多い分野である。実際、「民法典の抵当制度は土地を中心とする保全抵当であり、その後のわが国資本主義の発展と共に、生産信用の担保手段として、新たな立法的要求が出てくるのは当然の成り行きであった」(101頁)のであり、「特別法の制定ないし民法典の改正が行われてきた」(101頁)ところ、本書では、特別法上の担保制度についても概要が述べられるなど、網羅的かつ信頼のおける叙述がなされているため、近時は、改訂されていないが、今なお、信頼に値する書物と評価されている。

担保制度は、民法上の重要な制度であり、また実行のタイミングなど判断の難しい要素がある重要な分野である。

林浩靖法律事務所は、信頼できる文献を確認することを怠らずに業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年11月 7日 月曜日

[書評]日笠端・日端康雄 都市計画【第3版増補】(共立出版)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「都市計画【第3版増補】」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者である日笠端氏は東京大学名誉教授、日端康雄氏は慶応義塾大学名誉教授であり、共に工学博士である。当職がまだ大学生だったときの教養科目で、この本の旧版(第3版)が、参考書として指定されていたが、そのときは、日笠名誉教授の単著であった。平成27年に発行された増補版から日端名誉教授との共著となっている。

本書は、「都市計画総論というべきもので、都市計画に関する重要な事項を比較的広範囲に取り上げ、出来るだけ体系化し、大学で都市計画を学ぶ学生が一通り知っておかなければならない程度の事項を総論的に述べる」(第3版増補にあたって2頁)書物である。「都市計画は一方においてプランナーによる個性のある発想に負うところが大きく、一方においては公的な利益と私権の調整を衡量しつつ、法律・制度によって計画の実現をはからなければならないという特質をもっている」(2頁)から、制度への理解は不可欠であり、その制度は、日本では、都市計画法を中心に定められている。

そのため、本書は法律書ではなく、工学者が著者であるため、本質的には理系のテキストなのだが、都市計画法の枠組み、そのバックグラウンドが、歴史や技術的な部分を含め、論じられている。さらに、都市計画法11条の規定には、「計画の体系の中に、地区計画というものを明確に位置付けていないことから生ずる概念の混乱」があること(263頁)など、法令の問題点も指摘されている。都市計画法などは、技術的な制約や要求があるものであり、法令だけを見ていても、既定の意味がよく理解できないことがある。そのような法令の場合、背景の理解が重要であるが、本書は、都市計画の基本書であり、都市計画法の背景を理解させてくれる貴重な書物である。

林浩靖法律事務所は、法律の背景も押さえた上で、業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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