所長ブログ

2013年7月31日 水曜日

[書評]佐藤優・井戸まさえ 子どもの教養の育て方(東洋経済新報社)

一冊、書評をしたいと思います(本記事は書評なので、ここからは、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

当職には、1歳5ヶ月になる息子がいる。そこで、書店で目にしたこの本を手にとった。著者の一人である佐藤優氏は、作家・外務省元主任分析官で、数多くの著書がある。また、もう一人の著者の井戸まさえ氏は、前衆議院議員であるが、お子様が5人いるとのことなので、子どもの育て方のヒントが何かあるのではないかと考えたのである。

本書は著者のお二人の対談集であるが、冒頭の井戸氏の「読書なくして教養は成り立たない」(27頁)という発言は、まさにその通りだと思う。そのために、子どもに、どのように読書の習慣を漬ければよいのかということが問題になるのだが、「重要なのはテレビを見せないこと」(107頁)など、読書の習慣、ひいては、教養を身に着けさせるにはどうした良いかについてのヒントが、たくさん入っている良書であった。

また、後半では、角田光代氏の「八日目の蝉」を題材に、小説の実用的、功利主義的な読み方を教えてくれている点も良い。書名は、「子どもの教養の育て方」であるが、大人が自分の教養を身につけるための方法を考える上でも、役に立つと思う。

教養は、即座に役に立つようなものではないかもしれないが、知識のバックグラウンドという面があるから、どのような仕事についている者にも役立つものと言えるだろう。当職も、子どもにも教養を身に着けさせたいが、自分も教養をきちんと身に着け、それを生かしながら、皆様のお困りごとの法律相談に乗らせて頂ければと思います。

何かお困りごとがありましたら、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2013年7月28日 日曜日

原発事故被災者の状況

いつも依頼者の皆様のために全力を尽くしている 林浩靖法律事務所 の弁護士の林です。

本日は、日曜日ですが、原発被災者弁護団のメンバーの先生方と、原発事故の被災地の一つである福島県田村市都路町を訪れ、現地視察をしました。

都路町は、いわゆる平成の大合併の結果、田村市の一部となりましたが、それまでは、都路村であった地域のため、いわゆる都市部ではなく、典型的なヤマの中です。

除染作業が行われている地区も一部ありますが、ヤマの地域ですから、表面をはぎ取られて土地は痛々しく、放射能汚染被害の不可逆性を強く感じました。物事には、万一のことが起きたとき、取り返しがつかないことがあります。確率が低くても、そのような事態が起きたときの問題をどう考えるかを、今、一度、自分の中で問い直してみたいと思います。

原発事故の被災者の方はもちろん、その他のお困りごとを有している方のためにも、弊事務所は、最善を尽くしておりますので、お困りごとがある方は、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所までご相談ください。

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2013年7月21日 日曜日

[書評]七尾和晃 琉球検事 封印された証言(東洋経済新報社)

一冊、書評をしたいと思います。(本記事は書評なので、ここからは、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

本書は、「日本と米国、沖縄とアメリカ、大和と琉球。幾重にもからまった桎梏のなかで、司法の独立を守る使命を負わされた琉球検事」(8頁)の目を通じたゴザ事件の対応を中心に、沖縄の戦後史を扱った書物であり、中心となる登場人物は、比嘉良仁元琉球検察検事長、高江洲歳満元琉球検察公安部長検事、瀬長亀次郎元衆議院議員(元沖縄人民党委員長)の3名である。

私事であるが、本書の中心となる登場人物の一人、高江洲歳満先生には、一度、お会いさせて頂いたことがある。9年前の4月、当時、司法修習生だった当職は、さいたま市所在の菊地総合法律事務所の大塚嘉一先生の下に配属されて、弁護修習に入った。この事務所には、その年の3月まで刑事弁護で有名な高野隆先生がいらっしゃったが、高野先生は、ロー・スクールの教員になる関係で、東京へ移ることになり、退所されていた。しかし、まだ、ロー・スクールの担当する講義が始まっておらず、また、残務処理のために、よく事務所へ来られていた。そのようなときに、大塚先生から、「高野の刑事弁護も見てみたい?」(大塚先生と高野先生は学生時代からの同級生で、お互い呼び捨てで呼んでおられた)と聞かれ、当時修習生だった当職は見たいと希望した。ただ、高野先生はロー・スクールの講義準備のため、やっている事件を減らしておられたから、3ヶ月の修習期間中に見ることができそうなのは、当時、高野先生が、沖縄の高江洲歳満先生と一緒に行っていた、沖縄の米兵強制わいせつ事件しかなかった。そこで、この事件を見せてもらうことになり、高野先生と一緒に那覇地裁に行った際、高江洲先生とお会いして、公判の様子を見せてもらうだけでなく、終わったあとで、ステーキまでごちそうになった。温和な印象を受け、このときは、高江洲先生が、戦後の激動期の中で、責任を背負って仕事をされていたことなど、全く知らなかった。

高江洲先生は、事実を非常に大切にされていたが、それは、沖縄で「アメリカ世」(あめりかゆー)と呼ばれる米国統治期に経験された琉球検事としての経験が、そうさせている一面でもあるのかと思う。事実の大切さを理解していない法曹関係者は、さすがにいないとは思うが、日本流の訴訟方法は、「構成要件だけに事実を絞り込んでその範囲だけで主張と立証を行う」(54頁)という面があることは否定できない。他方、米国流の訴訟方法は、「すべての事実を審理し、その中から法的に意味のあるものを見つけ出すべき」(54頁)とするものであり、琉球検事として、米国流の訴訟方法を取り入れて、主張、立証を組み立てざるを得なかった経験が、高江洲先生に周辺事実も、きちんと扱う習慣をつけさせたのではないかと思う。

もちろん、日本流の訴訟方法がすべて悪いというわけではない。米国のようなあっさりと起訴して、後は裁判所に判断してもらおうとし、その結果、無罪判決になることも多い方法より、日本のようにしっかり捜査した上で、有罪と思われるものだけを起訴しようという方法の方が、罪を犯していない者は、早く刑事手続から外れることが多い以上、負担が少ないともいえ、日本流の方法に良い面もある。しかし、逆に、「しっかり捜査しているだろう」という思い込みが、冤罪事件を作っている面もあり、物事には良い面もあれば悪い面もある以上、バランスを考えながら、制度設計していくよりないのである。

本書は、本来は、沖縄の戦後史を扱う書物であり、特に、沖縄人の本土に対する潜在的な無意識や米国統治下での苦悩を中心に描かれ、今に続く基地問題などを考えるうえでも、参考になる書物であるから、機会があれば、ぜひ読んでいただきたいと思う。

東京・池袋所在の 林浩靖法律事務所 では、民事事件に限らず、刑事事件も取り扱っておりますし、日本流の方法の良い面はきちんと押さえながら、必要に応じて、他の考え方ができないかを常に考え、ご依頼者様の正当な利益をきちんと擁護できるように努めておりますので、お困りごとの際は、ぜひ、ご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2013年7月18日 木曜日

事前準備の重要性~人の振り見て我が振り直せ

今日は、あるご依頼者様の家事調停のために、東京家庭裁判所立川支部へ行きました。

今回の事件は、ご依頼者様は、相手当事者(手続の中では、「申立人」と呼ばれます。)から調停の申し立てをされた「相手方」という立場で、当職は、その代理人ということになるのですが、申立人代理人の弁護士の準備が極めて杜撰でした。最初に出される「申立書」において、申し立てる内容についても正確に記載ができておらず、もともと、「申立の趣旨変更申立書」がついているような申立書となっていました(ただ、この部分については、扱っていた事件の内容が定型的なものではないので、仕方がない面はあるとは思いましたが)。

ただ、申立の理由が、内容の当否以前に、意味不明としか言いようのない記載が多かったので、当職も、事前に答弁書を書くときに、えらく苦労することになりました。例を挙げれば、申立書の申立ての理由には、「債務の内訳は別紙目録記載のとおりである」と書いてあるのもかかわらず、別紙目録には、債務の明細がどこにもなかったり、「詳細は、後記8のとおりである。」と書いてありながら、後を見ても、そもそも「6」で終わってしまい、どこにも「8」はなく、また、該当すると思われる個所もどこにもないので、数字の誤記とも思えない箇所もありました。そして一番びっくりしたのは、「相手方Aは、Bが、C病院に入院した。」という箇所があったことです(固有名詞は置き換えてありますが、文章は、そのままです。)。これでは、そもそも、Aが入院したと言いたいのかBが入院したと言いたいのか分かりませんし、そもそも、日本語の文章になっていないです(小学校1年生の作文でも、もう少し、分かるように書くと思います。)。

もともと、このような、形式的にも杜撰な申立書でしたが、やり方はもっと杜撰でした。家事調停の場合、もともと、答弁書は相手当事者に開示されないのが原則で、裁判所の許可があって初めて開示されているので、事前に準備ができない面はあるのですが、申立人代理人弁護士の主張は、ざっくり言えば、「申立ての理由が本当にあろうがなかろうがそんなこと大した問題ではないから、金、寄越せ。」と言っているのと何ら変わりがなく、当職が、「必要なら、申立人の言う話が間違っていることは、具体的に説明するけれども、そのように考えているから、お金を払うことはあり得ない。」ということを、調停委員を通じて、申立人代理人弁護士に伝えると、「金にならないのでは、意味がない。」と調停委員に言ったようで、結局、裁判官と調停委員から、「調停手続を続ける意味があると思えないから、申立てを取り下げるか考えなさい。」といわれ、申立人本人と相談して、申立てを取り下げて、初回で事件が終わっていまうという結末になりました。

正直、このような申立人代理人弁護士の行動を相手方の立場としてみたときに、事前に準備していなかったんだろうという印象を強く受けました。調停は、話合いがまとまらなければ、結論は出せない手続です。離婚の場合は、調停前置主義と言って、調停をしなければ裁判ができないので、とにかく調停を申し立てるより仕方がないという部分はありますが、それ以外の場合は、まとまる可能性がそれなりにあると思われるか、調停が不成立でも別の目的(例えば、書類が届かず、内容証明郵便を送付しても戻ってきてしまうが、居住していることは確実と思われる者に、通知を行いたいから付郵便送達で書面を送るために申し立てるとか、証拠が足りないなど、訴訟をしても結果に自信がないので、一定の証拠書類を相手方から出させたいなど)があり、調停はまとまらなくても、その目的は達成できると思われるときとか、何らかの目的と見込みを考えて、調停を申し立てるのが、専門家としての弁護士の役割ですが、正直、申立人代理人がそのようなことを、事前に考えていたとは思えず、「調停を何のために申したてたのか」が全く分かりませんでしたし、その上、初回に取り下げさせられるようでは、依頼者への説明も厳しく、普通は、何らかの形で、少し続けさせようとするのですが、それをする理由も用意しておらず、申立てを取り下げざるを得なくなったのですから、何のために調停申立てをしたのか分からないという結末になってしまったのです。

東京・池袋所在の、 林浩靖法律事務所 では、この申立人代理人の弁護士ような杜撰な準備はあり得ませんが、準備をきちんとしなければ結果が出ることはありえないということを、改めて教えられる事件でした。

法律事務所にも、質の善し悪しはありますので、ぜひ、きちんと準備して、常にご依頼者様のために最善を尽くす弊事務所に、お困りの際はご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2013年7月13日 土曜日

[書評]宇賀克也 改正行政事件訴訟法[補訂版](青林書院)

今回は、東京大学大学院教授の宇賀克也氏の「改正行政事件訴訟法[補訂版]」の書評をしたいと思います本記事は書評なので、ここからは、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

この本は、「改正法の要点と逐条解説」という副題がついているように、もとは、平成16年6月に行政事件訴訟法の全面改正が行われたときに、その内容について、要点を示しながら、コンメンタール式に解説した書物である。もちろん、行政事件訴訟法の全面改正からすでに7年が経過しており、行政事件訴訟法についての詳細な書物は、多数、出版されている。

しかしながら、仕事上調べたことや学習の際に考えたことなどをまとめていく、ノート代わりに使う本としては、分量が多すぎることもなく、最低限必要なことがきちんと書いているこの本は使いやすい本と言える。若干、不満があるとすれば、判例の指摘だけでなく、判決文の引用をもう少しして欲しいことと、余白がもう少し欲しいことであるが、それを差し引いても、コンパクトで使いやすい書物と言えると思う。

行政事件訴訟法は、枝番を考慮しても全部で51条しかないものの行政事件についての裁判の手続きを定める法律であり、弁護士の仕事に直結する法律であるから、本書のようなコンパクトで分かりやすい本を手元に置いておけることは、業務上、有益なことはもちろんである。それだけでなく、本書は、法学部の学生や法科大学院の学生などに、より有益ではないかと思う。行政事件訴訟法は、行政法の勉強においてきちんと押さえておく必要がある法律であり、内容をきちんと押さえておく必要があるからである。本書の内容をきちんと押さえておけば、自分で考えることもできるようになるだろう。基本的な知識が頭に入っていない限り、物事は考えようがないものである。掛け算ができない者が方程式を解けるわけがないし、関数が理解できていない者に、経済学が分かるわけがないのと同じことである。

基本的な内容がきちんと網羅され、かつ、本文188頁」と分量も多すぎない本書は、行政事件訴訟法の理解のために、最適な本と思われる。

実際、在留資格に関する訴訟は行政訴訟ですし、選挙に関する訴訟も行政訴訟です。外国人法律問題のみならず、いろいろな分野で行政との関係が問題になることがありますが、何か困ったことがあるときは、早めに、東京・池袋所在の弊事務所にお問い合わせください。

林浩靖法律事務所
弁護士 林 浩靖

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