所長ブログ

2014年9月29日 月曜日

[書評]宮本憲一 戦後日本公害史論(岩波書店)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「戦後日本公害史論」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本の著者は、大阪市立大学名誉教授で、その専門は、環境経済学・財政学である。環境問題は、すぐれて学際的な分野であり、法律学、経済学、医学、科学など多数の分野が関連する。さらに、公害問題は深刻な社会問題であり、本書は、「この公害問題と対策の歴史の記録」(1頁)であり、「その歴史的教訓を明らかにし」「現実への警鐘」(1頁)とするものである。「公害裁判は問題の解決に大きな役割を果たしただけでなく、公害論を前進させた」(746頁)から、4大公害裁判(第4章)を独立の章として取り扱うなど、環境法上、重要な裁判については、判例集では知ることのできない詳細な事実関係や、和解の場合でもその内容などを知ることができる。原告がどのような法律構成を考えたかが、判決内容に劣らず重要な環境法の分野では、このような詳細が述べられている書物は、環境法の体系書や判例集とは異なる意味で有意義な書物といえる。
著者の専門の関係から、「学際的な分野を政治経済学の視点で裁断している」(745頁)面があり、また、高知地方裁判所を、通常の略称である「高知地裁」とせずに、「高知裁判所」(374頁)とする等、法律の世界の一般的な使い方とは異なる用語の使い方をしているような部分もあるが、それでもこの書物の持つ意義を下げるものではないと思う。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、関連分野の知識についてもきちんとフォローしていますので、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

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2014年9月22日 月曜日

[書評]淡路剛久・大塚直・北村喜宣編 環境法判例百選(第2版)(有斐閣)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「環境法判例百選(第2版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本は、有斐閣が出している判例百選シリーズの1冊で、主に、学習者向けの判例集である。判例百選シリーズは、学習者向けではあるが、当該分野について、最初に判例を概観し、どのような重要判例があるかを押さえるには、最良のシリーズといえる。

本書は、所謂、判例のみならず、公害等調整委員会の重要な採決も収録しており、環境法においては、公害等調整委員会の裁決も、権利保護の一翼を担い、かなりの重要性があるので、ここまで網羅されている判例集はありがたいといえる。基本書によっては、判例索引に公害等調整委員会の裁決まで含めているものもあるが、判例索引は、判例のみ掲載しているものもあり、また、判例集には公害等調整委員会の採決は掲載されていないものもあるので、ここまで取り上げられているのは、本当にありがたいことである。

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2014年9月15日 月曜日

[書評]桜井弘編 元素111の新知識(第2版増補版)(講談社ブルーバックス)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「元素111の新知識」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

「私たちは、日常生活のあらゆるところで元素とかかわっている」(8頁)ので、元素が、社会生活や事件とかかわることがある。例えば、福島第一原発事故で放出され、一時、報道でもよく耳にした「セシウム」も元素名である。この本は、京都薬科大学名誉教授である桜井弘氏が編著者となり、編著者を含む14名の共著であるが、①「エピソードをまじえたいきいきとした記述」(9頁)がなされ、「読み物として面白い」(9頁)、②「重要なポイントについてはできるだけ深く掘り下げている」(9頁)、即ち、理由がきちんと書かれている、③「生体すなわち、(中略)生命と元素の関係について可能な限り言及」(9頁)という3つの特徴を有している本で、通読するにも事典として使うにも適した本である。

例えば、コラム27として「福島第一原子力発電所事故と環境に放出された放射性元素」のようなコラム(430頁)があり、セシウムのような放射性元素と環境との関係がきちんと書かれているだけでなく、「中国の希土類鉱床は他国の鉱床と違い、地中の希土類元素が長い年月を経て年度に吸着した者で」あり、「粘土に吸着した希土類元素は薬品で簡単に抽出精製でき、他の鉱山よりコスト的に有利」(301頁)だから、中国が希土類元素(レアアース)について、高い競争力を有していること、即ち、中国政府がレアアース輸出規制をかければ、企業は安価なレアアースを調達することが難しくなることのような社会との関係にも触れられている。

このように、本書は、元素に関する基礎知識を、実社会との関連で調べるのに適した書物であり、本書を弁護士業務に活かして行きたい。

林浩靖法律事務所では、法律知識に限らず、常に隣接分野の知識も幅広くキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

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2014年9月 7日 日曜日

10周年記念大会に参加して

当職は、2004年10月に司法研修所を卒業して弁護士になりましたので、今年で10年ということになります。研修所を卒業して10周年は熱海、20周年は京都でパーティーというのが恒例になっています。そのため、昨日から今朝まで熱海後楽園ホテルでの記念パーティーに参加しました(ゴルフをする方は、今日はゴルフをしています。)。弁護士をやっているクラスメート、裁判官をやっているクラスメートで、半分ぐらいは参加していました。

皆さん、10年たって、当時と比べて、自信も貫禄もついていました。当職も、同じように成長したいと思います。

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2014年9月 3日 水曜日

[書評]川井健(良永和隆補筆)民法案内 13事務管理・不当利得・不法行為(勁草書房)



1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「民法案内 13事務管理・不当利得・不法行為」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

この本は、以前書評をした「民法案内1 私法の道しるべ(第2版)」(該当する記事は、こちら)のシリーズで、財産法の最後の部分にあたる書物である。このシリーズは、「我妻先生においても遺作となった『民法案内第11巻』の後を引き継」いで(はしがきⅱ頁)財産法の最後の部分を、我妻榮東京大学名誉教授の最後の弟子である川井健一橋大学名誉教授が執筆したものである。

この本が出版されているのを見たとき、大変驚いた。我妻名誉教授の後を、我妻名誉教授の弟子にあたる先生方が執筆して完成させたいという希望を有していたことは、川井名誉教授以前の補訂者もはしがきに同様なことを書かれていたので知っていたが、どの先生方も鬼籍に入られ、「最後の弟子」川井名誉教授も昨年5月に鬼籍に入られたからである。

しかしながら、川井名誉教授は、亡くなる直前まで「本書の執筆・完成に取り組」み(はしがきⅱ頁)、その原稿を良永和隆専修大学法科大学院教授が補筆して、本書が出版された。良永教授が、一部を川井名誉教授の基本書を参考にして補った影響かもしれないが、一部に学説の羅列と思われるところもあるが、概ね、基本的な対立点から書き起こされており、特に、不法行為法が、学説が乱立して、混迷を深めた状況になっている現在、本書が出版されたことは喜ばしいと思う。

不法行為は契約と並ぶ重要な話で、当然、普段、取り扱う事件でも問題になります。原発事故などは、不法行為法の塊のような事件です。林浩靖法律事務所では、基本から最新の事項まで、きちんとフォローしていますので、必ず、ご満足いただけるサービスをご提供しています。何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

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