所長ブログ

2014年7月27日 日曜日

[書評]潮見佳男 基本講義債権各論Ⅱ 不法行為法(第2版)(新世社)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、潮見教授の「基本講義債権各論Ⅱ 不法行為法(第2版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

本書の著者は、京都大学大学院法学研究科の教授で、特に、債権法の分野で参考になる論考を多数出されている教授である。潮見教授ご自身が、そのはしがきで、「本書は、法学部や法科大学院で獲得した法律知識を社会に活かすことを考えているものならば、学習段階の初期において、不法行為についてこの程度まで理解できておれば当面は十分であろうと思われるところをめざして、書き下ろしたもの」(はしがきⅱ頁)と述べられていますが、その通り、不法行為法の基本的事項について、(潮見教授の著書としては)比較的平易な言葉で述べられているものである。

不法行為法の分野は条文こそ少ないものの、実務的には問題となることが多い分野である。交通事故も金融商品被害も原発事故も不法行為法の一つの類型である。そして、条文が少ないことから、理論をきちんと押さえることが体系的思考を身に着ける上では極めて重要であり、本書のような薄いもののポイントがしっかりまとまっている書籍の有用性は大きい。

当職も、本書で確認した知識も生かしながら、金融商品被害救済や原発事故被災者の被害救済のために、今後とも努力していきたいと思います。また、林浩靖法律事務所は、金融商品被害や原発事故に限らず、多数の分野を取り扱っていますので、何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

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2014年7月18日 金曜日

[書評]髙木保興・河合明宣 途上国を考える(一般財団法人 放送大学教育振興会)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「途上国を考える」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。この本は、以前書評をした「現代環境法の諸相」(該当する記事は、こちら)と同じく、放送大学の講義用の印刷教材として執筆されている本で、著者の両名は、共に放送大学の教授である。

具体的には、開発経済学の理論を基礎に据えて、「途上国がなぜ貧困から脱出できないのかを考える」書物である。著者の一人である髙木教授が、理論面を執筆し、こちらが本書のメイン部分であり、河合教授は、アジアにおける実例をコラムとして、執筆している。

もっとも、著者自身、「『開発論』はどうすれば開発がうまくいくかという確立した公式を解説するものではない」(4頁)と述べているように、「開発」に、常にうまくいく方法がある訳ではなく、それぞれの国が、自国の長所を活かしながら、他国の経験も踏まえて、必要な条件を整備して、開発を進めていくよりない。その際に、イギリスの産業革命をはじめとする先進国の諸経験を、その「場」を意識しながら活かしていくということになるのだろうと思う。

南北問題は、現代においても、なお大きな問題であり、グローバル化した現代だからこそ、日本においても影響があらわれてきます。林浩靖法律事務所では、外国人問題も取り扱っていますし、また、ビジネスの現場では、常に、世界を意識する必要があるでしょう。これからも、世界を取り巻く問題についても、情報収集は怠らず、皆様に最良の法的サービスを提供できるように研鑽いたしますので、何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

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2014年7月 8日 火曜日

[書評]星野英一・梁慧星 監修/田中信行・渠涛 編集 中国物権法を考える(商事法務)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「中国物権法を考える」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。この本は、2007年に開催されたシンポジウムの報告を基にした報告書であり、中国の物権法の起草に参加した学者の報告とそれに対する日本の民法学者のコメントで構成されている。

社会主義的市場経済体制を採用する中国の物権法は、かなりの注目を集めたので、中国関係の法務を取り扱う実務家の注目も高かったが、当職が本書を手に取ったのは、全く異なる動機で、日本法を相対化するヒントを手に入れたいというものであった。弁護士は当たり前であるが、普段から法律を用いて仕事をしているから、当然、法的な知識は増えていくことになる。しかしながら、逆に、知識が増えすぎて思考が硬直化しかねない面もある。そのようなときに外国法に触れるのは、違うルールであるので、考えた方を相対化できるように思われる。

例えば、日本では、用益物権はあまり使われていないと言って良いだろう。土地を収益したければ、所有権を取得するのがベストであり、そうでなければ、賃借権が用いられることが多い。しかし、中国の場合、個人の土地所有権は認められていないから、「中国の経済体制改革の過程は、用益物権が絶え間なく形作られ、豊富になり完備される過程」(124頁)となる訳である。

このような、違いを考えるのは頭の体操としてよいし、本書は、中国物権法の全体を取り扱っているから、全体像をとらえるのにも有用と思う。

中国関係の法務を取り扱っているわけではない当職にとって、実用的な書物ではないが、興味深い書物ではあった。また、日本の物権法の理解をさらに深めるという意味でもよかったと思う。

所有権をめぐる紛争は多く、林浩靖法律事務所でも取り扱っています。何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

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2014年7月 1日 火曜日

[書評]大島堅一 原発のコスト-エネルギー転換への視点(岩波新書)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「原発のコスト」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

「本書は、原子力発電をどうするかをコストの問題として考えようというものであ」り(はしがきⅰ頁)、著者は、立命館大学国際関係学部教授で、専門は、環境経済学である。

思想的な問題や情緒の問題としてではなく、「コストの問題」としてとらえているので、他の発電方法との比較で、発電量に比してコストが大きければ、原子力発電は止めるべきとなる。そして、コスト分析すると、「過去四十一年間で最も安かった電力は一般水力」(104頁)であり、「地元自治体を原発がらみの資金漬け」(110頁)にするほど政策コストを用いている「原子力は火力と比べて四三倍、水力と比べて一七倍の政策コストがかかって」おり(111頁)、「原子力発電は、事故コストを含まなくても、他電源に比べて高いのであるから、事故のことを考慮すれば、経済性がないことは明白」(114頁)であることを示した上で、需給の関係からも原子力発電は止めるべきであることを論じている。

本書の最大の意義は、これまで安価な電力と思われてきた原子力発電が、実は、高コストな電源であることを実証的に示したことだろう。当職は、原発事故被災者救済の事件もやらせて頂いているが、皆様、本当にご苦労されており、その被害が甚大なものであることを示している。原子力発電は、本書で論じられているように、高コストであり、更に、一度事故が起これば、多くの方に甚大な被害を強いる以上、正義の観点からも、止めるべきであろう。

本書で得た知識も活かしながら、弁護士としてさらに頑張る所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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