所長ブログ

2014年3月19日 水曜日

[書評]平井宜雄 債権各論Ⅰ上契約総論(法律学講座叢書)(弘文堂)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「債権各論Ⅰ上契約総論」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

本書の著者は、既にお亡くなりになられているが、東京大学名誉教授である。法律学講座叢書のシリーズは、著者の見解を前面に出すものは少なく、全体的に穏当な学生向けの書物が多く、この本も、学生の教科書向けに書かれた書物ではある。

以前にも1度読んだことのある本であるが、本書を再読しようと思ったのは、本書は、「契約総論」とはされているが、契約総則のみを扱う書物ではなく、「契約法またはそれに関する学問的活動である契約法学(括弧内略)の基礎理論についての叙述を大幅に含」んだ書物であり(はしがきⅰ頁)であり、契約法の世界では、「契約自由の原則」が妥当する以上、契約書の作成の際には、その条項を考える必要がある。そのとき、頼りになるのは、基本となる理論をきちんと押さえていることである。著者は、「当事者が取引によっていかなる財を得るのが目標なのかを正確に分析し、認識したうえで、その法的枠組みたる契約上の権利義務関係を、基本の適用に携わる者としての任務と役割に立脚しつつ、創造力および想像力によって、当該目標にかなうように設計するという仕事こそ、今後の法律家が取り組むべきものでなければならない。」(はしがきⅳ頁)と述べているが、契約書の作成がメインとなる予防法務の重要性を述べているものであろう。このように、契約条項を考えるときに参考になる書物ということで、今回読み返したのである。

本書は、かかる観点から叙述がなされているので、「契約総則」に限らず、例えば、契約各論の一つである和解契約が、「紛争解決のための契約」(44頁)として、契約総論の中で扱われ、そのほかに、契約の解釈(76頁以下)や企業法務上は重要なletter of intent(136頁以下)もきちんと扱われている。もちろん、民法の「契約総則」の内容はすべて含んでいる。

本書は本文254頁であり、比較的薄い書物であるが、契約に関する基礎理論が分かり易くまとめられており、実務家にとっても重宝する基本書である。

林浩靖法律事務所では、企業法務を多数、取り扱っていますし、その中心は、契約書の作成ということになりますから、本書の内容をきちんと押さえて、皆様に最良の法的サービスを提供いたしますので、何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

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2014年3月12日 水曜日

[書評]竹森俊平 国際経済学(プログレッシブ経済学シリーズ)(東洋経済新報社)

2週連続になりますが、書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「国際経済学」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

本書の著者は、慶応義塾大学経済学部教授である。私事になるが、当職は、慶応義塾大学経済学部出身であり、もう15年ほど前になるが、大学2年生のときに、著者の「世界の経済」を、3年生のときに、「国際経済論」を受講した。この本は、その「国際経済論」の授業で教科書として指定されていた書物である。著者は、優しい先生で、単位の取りやすい科目ではあったが、内容は結構高度で、かつ、説明も丁寧になされていた。

本書で取り扱っている「内容の中心は、国際貿易の『理論』」(はしがきⅰ頁)であるが、「生産要素の国際移動が自由な世界では、生産は絶対優位にしたがっておこなわれるが、自由な国際貿易のみが可能な世界では、生産は比較優位にしたがって行われる」(7頁から8頁)という結論を示すべく、国際経済学の理論の内容を説明している。記述自体は分かり易いが、ミクロ経済学の応用分野なので、ミクロ経済学の一定レベルの知識があることは読む前提となる。なお、近代経済学は、モデルを用いて議論する学問なので、一定の仮定が置かれざるを得ない。国際経済学の場合、原則的な仮定として、「材は国と国との間の移動が自由であるのに対して、生産要素は国と国との間の移動がまったく不可能」(6頁)という仮定が置かれている。現実には、日本にも外国人労働者がいることからわかるように、生産要素である労働力も国と国との間を移動しているわけで、経済理論が、即、現実に妥当するわけではない。しかし、ある種の「単純化」がなければ、議論は拡散するし、意味のあるものにもならない。「仮定」の内容とその現実的な妥当性を考えながら、理論を現実に応用していくべきではないだろうか。経済理論は、かかる観点を持てば、現実の分析に活かすことができるし、また、現在、「貿易」を全く考えずに、生活することなど不可能だろう。大企業は言うに及ばず、中小企業だって、他国の影響を間接的であれ、受ける時代なのだから。

林浩靖法律事務所では、企業法務も外国人問題も取り扱っていますし、また、ビジネスの現場では、常に、世界を意識する必要があります。これからも、世界を取り巻く問題を考えるのに役立つ理論についても、情報収集は怠らず、皆様に最良の法的サービスを提供できるように研鑽いたしますので、何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

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2014年3月 6日 木曜日

[書評]山内晋次 NHKさかのぼり日本史外交篇[9]平安・奈良 外交から貿易への大転換ーなぜ、大唐帝国との国交は途絶えたのか(NHK出版)


久しぶりに、1冊、書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「NHKさかのぼり日本史外交篇[9]平安・奈良 外交から貿易への大転換ーなぜ、大唐帝国との国交は途絶えたのか」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

本書は、以前に書評をした「NHKさかのぼり日本史外交篇[7]室町"日本国王"と勘合貿易ーなぜ、足利将軍家は中華皇帝に「朝貢」したのか」(該当する記事はこちら)と同じシリーズの平安・奈良時代編で、著者の山内晋次氏は、神戸女子大学文学部教授である。

このシリーズは、通常の歴史の本とは異なり、現代の方から、過去へさかのぼっていくという体裁になっているので、高校レベルの日本史は身についていないと読みにくい本だが、内容的には、最新の研究成果に基づいて、通説的な見解に対する厳しい問題提起が行われている面白い本である。例えば、平清盛による日宋貿易の独占という通説的な見解についても、「清盛とその一門はけっして、日宋貿易を独占的に支配し、その富を一手に集積するといった、特別な立場にあったわけではない」(33頁)ことを示したうえで、清盛が大輪田泊(現在の神戸港)を整備したのは、「西国からのヒト・モノ・情報などの流れを都に入る前に確実に押さえ、管理することによって、一門の経済的・政治的な基盤を固めることこそが、大輪田泊を確保し、整備するという事業の最大の目的」(46頁)であるとするなど、通説的な知識が覆されていく面白さを感じることができる。

今回は、業務と全く関係がない書籍に書評をさせていただきました。気分転換です。また、気分を新たに、皆様のために頑張らせて頂きたいと思いますので、お困りの際は、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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