所長ブログ

2013年5月 3日 金曜日

[書評]笹本潤 世界の「平和憲法」新たな挑戦(大月書店)

本日は、憲法記念日なので、憲法についての本の書評をしたいと思います。憲法記念日になると、護憲派、改憲派がいろいろ言いますが、現在の憲法についての基本的な知識を身に着けてからでないと、護憲だ、改憲だと言っても何の意味もありません(まず、現状をきちんと知ることは何事についても出発点だと思います。)ので、事実上の国定教科書である芦部信喜東京大学名誉教授の「憲法」(岩波書店)を条文を引きながらきちんと読んで、基礎知識をまず、頭に入れてから、護憲、改憲と意見を言ってほしいと思います(某政治家みたいに芦部名誉教授の名前も知らない人には、憲法改正を論じる資格はありません)。ここで取り上げる笹本潤氏の「世界の「平和憲法」新たな挑戦」も、芦部名誉教授の「憲法」を読んでいない方には、まず、芦部名誉教授の「憲法」を読んでから、読んでほしいと思います(本記事は書評なので、ここからは、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

本書の著者は、弁護士で、日本国際法律家協会の事務局長である。かかる著者の経験も踏まえ、先進的な憲法である「日本の憲法9条に価値があることを当然の前提」(19頁)と世界で認識されており、常備軍の廃止を定めたコスタリカ憲法第12条とともに、世界の平和憲法のさきがけともいえる存在である憲法9条は、1994年に制定されたパナマの憲法など、世界の憲法に影響を与えていることを論じている。その際、沖縄問題や北朝鮮問題にも触れながら、現実に即して、平和憲法の活かし方、守り方を考えている本である。

日本が、「戦後60年間、戦争をしないで過ごすことができた」(78頁)のは、もちろん、世界情勢や国民の意識によるものではあるが、やはり憲法9条の存在は、一つの大きな支えになったことは間違いない。憲法9条は、思想の淵源をさかのぼれば、カントの「永遠平和のために」に行きつくことになるが、1946年の段階で制定された日本国憲法の9条は、1949年に制定されたコスタリカ憲法の12条とともに世界でも先進的な憲法であり、今なお、その価値は失われていないというべきだろう。

もちろん、憲法は改正すべき点がない絶対的なものではない。しかしながら、最近の改正論議は、(環境権の明文化の話は別として)全体的に日本国憲法の先進的な価値を失わせる方向の意見が多い、即ち、改正ではなく、実質的には「改悪」に過ぎないものが多いように思われる。

憲法記念日に、今、一度、日本国憲法の価値というものを考えさせられた。憲法が最高法規である以上、法律家として、憲法の価値は常に意識して、依頼者の皆様の権利擁護に少しでも役に立てるように、これからも頑張りますので、お困りのことがございましたら、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にぜひご相談ください。

弁護士 林 浩靖



投稿者 林浩靖法律事務所

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