所長ブログ

2013年8月 6日 火曜日

[書評]アーネスト・ゲルナー(加藤節監訳) 民族とナショナリズム(岩波書店)

ブログをお読みになっている方には、いつ本を読んでいるのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、興味を持った本は、通勤時間に次々読んでいます。当職が乗る駅は、始発駅なので、いつも座っていけることから、通勤電車の中でも本を読むことができます。そこで、今回読んだ、アーネスト・ゲルナーの「民族とナショナリズム」の書評をしたいと思います(本記事は書評なので、ここからは、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

今回、この本を読むことにしたのは、尖閣問題やパレスチナ問題などを見ても、現在の社会で大きな影響を与えていることは明らかなものの、その実態はよく分からないナショナリズムとはなんなのかということを知りたかったためである。

英国哲学界の巨人であった著者は、最初に、ナショナリズムを「政治的な単位都民側的な単位が一致していなければならないと主張する一つの政治的原理」(1頁)と暫定的な定義をしたうえで、権力への距離、文化の同一性、教育の機会という3つの要素から、産業社会において、なぜナショナリズムが生じたのかということを解き明かしている。本文は、240頁にしか満たない薄い本であり、そのために若干、予備知識を要求しているところはあるが、高校時代に世界史や政経・倫理をきちんと勉強していれば、内容を理解しながら読むことができると思う。

著者は、最終的に、ナショナリズムを「きわめて特殊な種類の愛国主義であり、実際のところ近代社会でしか優勢とならない特定の社会条件の下でのみ普及し支配的となる愛国主義」(230頁)という結論に至っているが、その理由づけはいろいろな角度からなされており、十分に説得力のあるものであった。

ナショナリズムについて考える際には、必ず読んでおきたい本の一つであることは、間違いないだろう。薄いながらも内容のしっかりした良書だと思う。今後、ナショナリズムが問題になるときは、この本の視点で考えてみたいと思う。それは、教養としてだけではなく、外国人からみれば、日本がどう見えるかという点で、外国人の依頼者の法律相談や外国人との交渉のときにも役立つ話だと思った。

本書は、若干、予備知識を要求する本ではあるが、良書なので、読んで見たいと考える方がいらっしゃれば、本当にうれしく思います。また、当職は、今後も、ご依頼者のお役にたてるように、日々精進しますので、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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