所長ブログ

2013年8月14日 水曜日

[書評]小林節・伊藤真 自民党憲法改正草案にダメ出し食らわす!(合同出版)

林浩靖法律事務所は、夏休みは今月の終わりに頂く予定です(後日、正式にお知らせいたします)ので、お盆期間中も普段と同じ様に執務しておりますが、世間一般はお盆休みということで、ご依頼者様からの連絡も少なく、少し時間があることは事実です。そこで、最近読み終えた「自民党憲法改正草案にダメ出し食らわす!」について、書評をしたいと思います(本記事は書評なので、ここからは、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

著者の1人である小林節氏は、慶応義塾大学教授で改憲派の論客として知られ、もう一人の著者である伊藤真氏は、弁護士兼伊藤塾の塾長で護憲派の論客として知られている(伊藤氏は、以前書評をした「伊藤真の行政法入門」の著者である)。

このように著者の両名は、異なる立場に立つが、対談はきちんとしている。それは、両者とも、「議会も含めた権力を憲法によって縛るもの」(50~51頁)である立憲主義という基盤は共通にあり、その上で議論が展開されているので、議論になっているのである。これに対して、自民党の憲法改正草案は、立憲主義を全く理解していないとしか言いようがないものであり(さすが、総裁が、憲法学の有名な教授である故・芦部信喜東京大学名誉教授の名前を知らないと言っただけのことはある。)、自民党の草案を見たら、「憲法制定の精神は、第一は君権の制限にあり、第二に市民の権利を保護するにあり」(54頁)と述べ、立憲主義について、一定の理解があった明治の元老、伊藤博文が見たら仰天し、嘆くであろうとしか思えないものであった。

かかる事情から、自民党の憲法改正草案は、護憲派の伊藤氏のみならず、改憲派の小林教授からも反対されている、どうしようもない代物になってしまっている。

ただ、この憲法草案を見たとき、自民党の右派の本音は、日本を中国のような国にしたいのではないかと思えてきた。社会主義市場経済を自称する中国は、政治体制としては、未だに社会主義であるため、自由主義国の基本原理である立憲主義、三権分立制は採用されず、民主集中制と呼ばれる共産党の一党独裁体制をとっている。中国は、このような体制をとっているから、もちろん、西欧の天賦人権説を採用していないが、自民党の憲法改正草案も天賦人権説を否定することを目的としている(自民党 日本子奥憲法改正草案Q&A Q13)。もちろん、日本で、「民主主義を、自民党の一党独裁に変えたい」などと言ったら、実現する前に議員が全員落選してしまうだろうから口には出していないが、やっていることの実際は、まさに日本の中国化であろう。個性を重視するのではなく、国の利益を重視し、国民はカネを稼ぐことだけは自由にやって下さいということである。見かけは、戦前への回帰に見えるかもしれないが、実際は、戦前への回帰というよりは、中国化といったほうが実態に近いのではないかと思う。物事は、その本質が何かということは考えなければならない。それが、教養であり、また、そこを考えていることが、最後は、自分たちの利益を守ることにつながるのだろうと思う。

林浩靖法律事務所では、物事を本質から考え、常に、ご依頼者様の利益を守るために最善を尽くしますので、何かお困りごとがありましたら、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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