所長ブログ

2013年9月16日 月曜日

[書評]佐藤優 新・帝国主義の時代 左巻 情勢分析篇(中央公論新社)

今日は、敬老の日ということで、祝日です。そこで、「積ん読」状態になっている本の中から、佐藤優著「新・帝国主義の時代 左巻 情勢分析篇」を読んだので、この本の書評をしたいと思います(本記事は書評なので、ここからは、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

本書の著者は、作家・元外務省主任分析官で、以前、書評をした『子どもの教養の育て方』(東洋経済新報社)(→該当する記事は、こちら)の共著者の一人である。著者は、その経歴からも分かるように、元官僚であるので、保守的な意見が多いが、本書は、「情勢分析篇」とあるように、現状分析を中心とした本であるから、その思想に関係なく役に立つ本である。特に、本書は、レーニンの「帝国主義」やアーネスト・ゲルナーの「民族とナショナリズム」などの古典を踏まえた上で、分析が行われているので、古典を、現代を見るにあたってどのように活かすかを知るという点でも、役に立つ本である。たとえば、著者は、「(マルクスの)『資本論』の論理は、現在の新自由主義に基づくグローバル資本主義を分析する際に役に立つ」(39頁)など、古典の使い方を指摘している。

また、北朝鮮について、「首領は可視化された神話」(125頁)などと、一種の宗教的な観点からの視点を提示することで、何を考えて行動しているのかよく分からなくなる北朝鮮の行動パターンを見るための視点を示してくれている点でも良い。イスラーム原理主義の問題も含め、「宗教」という視点を導入することで、世界情勢が、かなり分かり易くなることが示されている。宗教は、信じていない者にとっては、不合理でばかばかしいものに見えるが、現実の影響力は大きいことが分かる。

国際情勢について、多くが費やされているが、日米密約に関して、「日本政府の説明は、嘘を含む不正直なもの。民主主義の原則から、本来あってはならない。」(398頁)と報告書で指摘されたことを引きながら、外務省の問題点を指摘しているが、この話は、日米密約の問題だけでなく、原発の問題にも同じことが言えるだろう。その点で、国際情勢だけでなく、国内問題にも関係する指摘がなされていると思う。

また、著者は、逮捕され、東京拘置所に収容されていた経験もあることから、「検察庁から拘置所に護送される前に弁護人を会うことができれば、不安はかなり軽減することができる」(383頁)など、被疑者・被告人の立場から、弁護人に参考になることを指摘されている点も、弁護士である当職には参考になる記載であった。この点は、弁護士などにとって役立つだけではあるが、こういう小さな指摘がきちんとされている点でも、本書は良書であると思う。

実際に生じる事件には、経済情勢など、その時々の社会情勢に応じて、生じる事件にも差異が生じるから、現実の社会情勢をきちんと押さえることは、弁護士としての業務処理にも役立ちます。法律知識だけでなく、社会情勢もきちんと押さえて、ご依頼者様のために最善を尽くす東京・池袋所在の林浩靖法律事務所に、お困りの際は、ぜひご相談ください。

弁護士 林 浩靖


投稿者 林浩靖法律事務所

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