所長ブログ

2013年10月11日 金曜日

[書評]フリードリッヒ・リスト(小林昇訳)経済学の国民的体系(岩波書店)

久しぶりに1冊、書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、ドイツ経済学史上の古典と言ってよい、フリードリッヒ・リストの「経済学の国民的体系」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

イギリスのアダム・スミスは自由貿易論を唱えたが、これに対して、19世紀当時の後進国であるドイツのフリードリッヒ・リストは、経済発展には段階があり、後進国は、保護関税によって、先進国と同じ段階に並ぶまでは、自由貿易に転じるわけにはいかないということを、当時のドイツのために理論化しようとした。
その根本は、「経済学は哲学と政策と歴史との上に立脚する」(45頁)という立場を前提に、国民経済の発展には段階があり、「富」と「富を生み出す力」を区別して、「富を作り出す力は...富そのものよりも無限に重要」(197頁)と考え、「富を作り出す力」を育成するために、保護関税を正当化しようとするものである。
勿論、リストが本書を書いた時代と現代には、異なる点がある。「植民地」は、現代には、ほとんど存在しないし、また、覇権国は、当時のイギリスから米国に変わった。しかしながら、当時の覇権国、イギリスが自由貿易を推進したとの理由を分析し、アダム・スミスが唱えた自由貿易論が、普遍的な経済理論ではなく、あくまでイギリスの繁栄のためにあることをきちんと押さえている点は、自由貿易主義を極限まで進めようとした新自由主義の限界を明らかにしているといえ、リーマン・ショック後の世界を考える上で、役に立つと思う。「国家」や「制度」に重きを置いている点で、法律がなぜ必要なのかということも考えさせられる書物である。当時の覇権国、イギリスが自由貿易を推進したことと、現代の覇権国である米国が、TPPを推進しようとしていることの共通点を考えさせられるものでもある。
将来、世界政府が実現し、世界の全ての地域が一つの国になれば、国内問題と国際問題の区別は無くなるのかもしれない。しかしながら、このような世界政府が実現するのは、」遠い将来の問題であって、少なくとも、近い将来に実現する可能性はないだろう。そのような中で、純粋な資本主義が進展することは、世界中で格差を拡大することになりかねない。
マルクスが考えた共産主義とは異なる処方箋で、資本主義の問題点を克服しようとしたリストの考え方は、現代においても学ぶ点が多いと思う。
新自由主義の下、格差が拡大した現代だからこそ、リストの思想が再評価されるべきだと思う。
訳者が、「訳注と訳者解説と索引(解説つき)との三者が相俟ってコンメンタールの役目を果たす」(訳序ⅸ頁)ことを目的に編集した本書を手に取って頂けると嬉しく思います。そして、当職も、格差問題についても、法律家の立場から、その解決に少しでも貢献できるようにしたいと思います。もちろん、それ以外の問題についても、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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