所長ブログ

2013年12月18日 水曜日

[書評]我妻榮(遠藤浩・川井健補訂)民法案内 1私法の道しるべ(第2版)(勁草書房)

一冊、書評をしたいと思います。今回は、「民法案内 1私法の道しるべ」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、学生向けのいわゆる入門書であるが、当職が生まれる前に亡くなったにもかかわらず、いまだに通説として通用している部分が多い我妻榮東京大学名誉教授の書かれた入門書であり、まさに、補訂者の遠藤浩学習院大学名誉教授が書かれているように、「我妻民法学の期間に触れることができ」る「見事なまでの『案内』」書となっている(はしがきⅴ頁)。本書の初版を以前、読んだことがあったが、本年2月に改訂されているので、この機会に読み直してみることにした。特に、私法全体の概説している書物は多くないので、この部分を分かり易く説明しているという意味で、民法や商法の勉強が必要になったビジネスマンやこれから民法や商法を勉強しようという学生向けの書物である。ただ、新しい問題を考えるときは、大きな視点を押さえていることが重要なので、実務家や研究者もたまに読み返すとよい書物と言えよう。民法だけでなく、商法や労働法、経済法の基本原理も示されており(商法は88頁、労働法は91頁、経済法は95頁)、学習の指針とできる書物である。

ただ、疑問を感じざるを得ない記述も2か所ほどではあるが、存在する。まずは、「法律を学ぶには、暗記してはだめだ、理解しなければならない、というだけのこと」(1頁)という記述であるが、理解が大切という著者の考えには共感するが、理解した上で、暗記することは必要である。その意味で、この言葉をあまり安易に受けとると危険だと思う。また、司法試験の「塾で発行している参考書には、重点的に、学説のA説、B説、C説というように、対立点が簡潔に示されており、判例の立場も明確に述べられている。答案を作るには便利である。しかし、その学習法によって、世の中で生ずる問題を適確に解決する判断が養われるかは疑問である。」(47頁)と批判して、学者の書いた基本者で学習することを薦めている。我妻名誉教授が本書を書いた時代には問題になっていなかった話であり、おそらく、補訂者の川井健一橋大学名誉教授が追加したものと思われるが、学者の書いた基本書にもダメなものもあり、また、いつまでも受験指導校の教材のみに頼っているのでは困るが、かかる教材が基礎知識を押さえるには有用であることは間違いなく、結局は、学者の書いた基本書にしても、受験指導校の参考書にしても、あるいは、実務家のための実務書にしても、使い方の問題である。長所を生かし、短所をフォローするような使い方を考えればよいだけの話であろう。

当職は、基本を常に確認しながら、皆様に満足していただける法的情報を提供するように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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