所長ブログ

2014年4月22日 火曜日

[書評]沢野伸浩 本当に役に立つ「汚染地図」(集英社新書)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「本当に役に立つ『汚染地図』」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。

本書の著者は、金沢星稜大学短期大学部教授であり、ナホトカ号重油流出事故の漂着油調査などのフィールドワークも行っている方である。この本は、「地理情報システム」(GIS)をキーとして、まず、汚染地図の作成方法を説明し、その上で、GISの中身や活用方法を説明している。最近の大規模な汚染事故は、もちろん、東京電力福島第一原発事故であるから、この事故に関する話が多くなる。そのため、本書では、SPEEDIに関して、「一〇年近く前に改められたはずの『規格』が、『原子力防災の世界』ではそのまま見直されることもなく、使われ続けていた」(19頁)など、法律家が気づきにくい国の過失が指摘されている。

また、著者が作成した「セシウム汚染マップ」の意義として、「原発事故発生直後の汚染状況が、一目で、しかも集落単位や家単位で把握できる。こうした"使い勝手のいい„汚染分布図は、他には見たことが無い。しかもそれは、『核兵器を保有する米国が測定した』というお墨付きがあるデータに裏付けられている。」と述べており、福島台地原発事故の被災者のための活動をしている当職には、本当に興味深い資料に思われる。

さらに、福島第一原発事故が、チェルノブイリ事故の10分の1程度のものという御用学者や御用ジャーナリズムが唱える俗説に対しても、「『汚染面積』でチェルノブイリと福島を比較するうえでの最大の問題点は、福島側の『汚染面積』値には、海域に流れ出した『東半分』の汚染実態が全く反映されていないということ」(163頁)と問題点をきちんと指摘して、フィールドワークを行っている学者らしく、データを示した上で、「『一般住民の居住は不可能』とされる一平方メートル当たり一四八万ベクレル以上の汚染に晒された住民の数では、チェルノブイリも福島もさして変わらない」(165頁)との結論を述べ、御用学者や御用ジャーナリズムが唱える俗説が誤りであることを具体的に明らかにしている。このように、具体的な議論がされているので分かり易い本である。

当職は、本書で得て知識も生かして、原発事故被災者のためにさらに頑張る所存ですし、また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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