所長ブログ

2015年5月11日 月曜日

[書評]芦部信喜著・高橋和之補訂 憲法[第6版](岩波書店)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、芦部名誉教授の「憲法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

憲法改正が政治問題として持ち上がるなど、本書のはしがきにも書かれているとおり「日本国憲法は重大な岐路に直面している」(はしがきⅴ頁)。著者である芦部信喜東京大学名誉教授は、憲法学の第一人者と評価された方であり、長く司法試験の考査委員も務められた。

当職が、司法試験を受験した頃は、芦部名誉教授の基本書は必読書の一つであり、当職も、この本の新版を用いて勉強した。芦部名誉教授はお亡くなりになったが、一番弟子といえる高橋和之東京大学名誉教授が、その後の補訂を行っている。簡潔な書物であるが、一つの筋のとった骨太の書物といえよう(もっとも、弱点がないわけではない。前半の人権の分野は良いのであるが、後半の統治の分野は、もう少し記述が欲しいところはある)。

憲法は、実務的にはあまり使わない法律であり、当職も、憲法論を大展開するような訴訟を行った経験はなく、憲法に基づく主張をしたのも数回しかない。しかしながら、憲法は、最高法規であり(98条)、全ての法律は、憲法に従った解釈を要求されるのであるから、憲法は、法律家のバックボーンとして、極めて重大な意味を有する。そのために、実務的にはあまり使われないとしても、旧試験時代から、憲法は司法試験の必須科目とされていたのであり、一人一人の国民としても、憲法を守っていかなければならない。

憲法は、「不滅の大典」ではないので、改正が許されないわけではないが、これまで平和国家として、我が国の繁栄を支えた日本国憲法が、今、その根本価値を揺るがされようとしている。これまで積み重ねられてきた憲法学の成果を確認した上で、国民として憲法を守っていかなければならない時代になっていると思う。そこで、改訂を機会に本書を読み直してみた。

林浩靖法律事務所では、日本国憲法が守ろうとしている皆様の幸福追求権や財産権などを、きちんと守ることのできるサービスをご提供しています。何か、お困りごとがございましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談下さい。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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