所長ブログ

2015年11月18日 水曜日

[書評]東京電力福島原子力発電所事故調査委員会 国会事故調報告書(徳間書店)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「国会事故調報告書」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、平成24年7月5日に両院議長に提出された、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会に基づき設置された、国会事故調の報告書である。

国会事故調は、結論として、「事故の根源的な原因は、東北地方太平洋沖地震が発生した平成23(2011)年3月11日以前に求められる。当委員会の調査によれば、3.11時点において、福島第一原発は、地震にも津波にも耐えられる保証がない、脆弱な状態であったと推定される。地震・津波による被災の可能性、自然現象を起因とするシビアアクシデント(過酷事故)への対策、大量の放射能の放出が考えられる場合の住民の安全保護など、事業者である東京電力及び規制当局である内閣府原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院、また原子力推進当局である経済産業省が、それまでに当然備えておくべきこと、実施すべきことをしていなかった」(10頁。なお、引用にあたり、括弧内は略した。)と述べているが、この平成24年7月5日の報告内容は、その後に判明した事項を踏まえても、妥当な結論であり、本報告書の報告内容は、現時点でも、福島第一原発事故に関する基本的な文献と評価できる。

この国会事故調報告書は、問題点をきちんと指摘するものであり、現在でも、なお、福島第一原発には放射線量の高い箇所があり、十分な実地調査ができない以上、問題点を押さえて、その点を重点的に検討していくという国会事故調の手法以外に、現段階で、事故状況を調査する適切な方法はないといえよう。

福島第一原発事故に関しては、国会事故調の外にも報告書は出ているが、調査方法に欠陥があるとしか思えないものや、責任逃れのための論理に終始する報告書が多い中で、この国会事故調報告書は、現段階でもなお、一番信頼に値する報告書であり、福島第一原発事故について知りたい方には、一番お勧めできる基本的文献である。ただ、国会事故調は、野党主導で設置された経緯があり、そのために、官邸の動きに関する評価で、やや強引な評価が目立つのが難点ではある。ただ、事故自体の検討については、この報告書が一番信用に値すると言える。

また、平成24年7月5日という早い時期に出されているため、それ以降に判明した事項については、記載がない点は留意する必要がある。もっとも、現段階で、国会事故調報告書の記述が誤りと思われる箇所は発見されていないので、信用性の極めて高い基本的文献である。

当職は、福島第一原発事故被災者の支援にも関わっていますので、国会事故調報告書の調査内容を活かして今後とも活動していきたいと思います。また、福島第一原発事故に限らず、必要な情報はきちんと調査しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

林浩靖法律事務所
弁護士 林 浩靖



投稿者 林浩靖法律事務所

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