所長ブログ

2014年6月 9日 月曜日

[書評]大塚直 環境法(第3版)(有斐閣)

2週続けて、法律書の書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「環境法(第3版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」「ます」調ではなく、「だ」「である」調で書きます。)。この本は、環境法の体系書であり、著者の大塚教授は、早稲田大学法務研究科・法学部の教授である。

環境法は、平成18年以降、司法試験の試験科目となったこともあり、書籍は徐々に増えているが、それ以前に初版が出版された本書は、まさに、環境法の基本書の決定版の地位を今でも保っている書物であると思う。確かに、環境法の書籍は増え、良質な入門書・基本書は増加している(以前、書評をした「現代環境法の諸相」(該当する記事は、こちら)も良質な入門書の一つといえる。)が、本書のように、国際環境法まできちんと目配りをして、かつ、環境法の勉強まできちんと示している書籍は、今のところ、他にはないと言って良いだろう。唯一の難点とすれば、最新の第3版は2010年の出版であり、改訂のペースがやや遅いことくらいであるが、本書の情報量の多さを考えれば、著者としても頻繁に改訂する訳にもいかないと思われるので、やむを得ないものと考える。2010年以降の法改正については、今のところ、他の書物でフォローするか、環境省のホームページなどを利用するよりないだろう。

環境法は、他の法律の勉強と少し異なる面がある。即ち、「環境法学は環境政策と密接に結びついており、法律を通じて政策についての理解が求められる」(はしがき(36)頁)という面があり、そのため、他の法律の勉強のように、論点の解釈が問題になるという場面は少なく、「法律の構造を全体的・『機能的』に捉え」る(はしがき(36)頁)ことが求められる。実際、環境法で問題になる論点というのは、ほとんどが、民法か行政法上の論点といえる。環境法は、民法や行政法だけでなく、「さまざまな法分野に関係するとともに、政治学、経済学、化学、生物学、工学、医学等の諸分野とも関連する、すぐれて学際的な領域」(はしがき(2)頁)という特性がある。このようなことを、きちんと示していることは、本書が出版当時は、環境法の数少ない体系書だったこともあるのであろうが、環境法の学習の入口を間違えさせないようにきちんと押さえているうえに、国際環境法も含め、全ての問題点を網羅している基本書は、他にないと言ってもよかろう。

なお、環境法の専門家には、民法から入っている先生と行政法から入っている先生がいるところ、本書の著者の大塚教授は、民法から入っている先生なので、行政法の部分については少し不安が残る面はある(逆に、以前、書評をした「現代環境法の諸相」の著者の北村教授は、行政法から入っている先生であるので、民法については、少し不安が残る)が、これは、環境法の性格を考えればやむを得ないと考えるよりなかろう。

原子力の問題は、原子力法という別の法分野と考えられているので、本書では触れられていないが、環境法の応用分野ともいえるので、原発事故の問題の処理にも役立てたいと思う。

本書で得た知識を活かしながら、弁護士として、原発事故被災者のために、また、それ以外のお困りごとを抱えている方のために、本書で得た知識も活かしながら、今後とも頑張る所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

投稿者 林浩靖法律事務所

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