所長ブログ

2017年1月11日 水曜日

[書評]長沼伸一郎 経済数学の直感的方法 マクロ経済学編(講談社ブルーバックス)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「経済数学の直感的方法 マクロ経済学編」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、以前、書評をした「物理数学の直感的方法(普及版)理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬(講談社ブルーバックス)」(該当する記事は、こちら)の著者である長沼伸一郎氏である。

本書は、直観的に理解させることで有名な著者が、「マクロ経済学の『動的マクロ均衡理論』で、もう一つは金融工学のブラックショールズ理論」...がいわば『二大南海理論』としてそびえ立っているというのが、現在の経済学の姿」(5頁)という認識の下、「物理や天体力学の世界で成功した数学技法で使えそうなものを寄せ集めて作られた、という性格」を持つ経済数学(4頁)について、物理の思想から説き起こすという書物である。

当職は、大学は経済学部の出身なので、経済学を学んだわけであるが、「ケインズの大づかみの理論を『マクロ経済学』、均衡メカニズムを基本原理としてそれを下から積み上げていくものを『ミクロ経済学』として両者を分離し、前者は制作現場で実戦に使えるが、後者のミクロ経済学はアカデミックな世界の実験室のみで使える、基礎を探求するための学問」(46頁~47頁)という指摘は、聞いたことがなかった。ただ、大学生のときは、どちらかというとミクロ経済学の話への興味が強かったものの、社会に出てみるとマクロ経済学の話の方が、興味を持てるようになった理由が分かるように思えた。社会に出ると、どうしても実践に役立つ知識に引かれるものだからである。

そして、動的マクロ均衡理論のイメージを描き出す中で、経済数学の重要な部分が説明される。例えば、ここで取り上げられているラグランジュアンは、大学生のときに学んだが、正直、「やり方」しか分からなかった。ここでは、その盲点の一つである「『ラグランジュアンは基本的には2この変数で書かれ、それらは「一方の変数がもう一方の『変化率』になっている」という関係を満たしていなければならない』」(113頁)という指摘や「ラグランジュアンというものは基本的に『式の生成装置』」(178頁)という指摘は、ラグランジュアンについての理解を深めてくれる指摘であった。

更に、微分方程式、固有値、位相・関数解析といった分野についてのポイントを、「一番必要なのは、その基本思想が何を『目的』にしているのかを知ること」(314頁)という観点から説明されており、経済学を学ぶ上で、重要な数学を解説している。

経済学は、法学の隣接学問の1つであり、その理解は、法学の理解も豊かにしてくれるものといえます。林浩靖法律事務所では、法律に限らず、隣接分野についても常に研鑽を怠らず、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所

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