所長ブログ

2016年3月14日 月曜日

[書評]日野行介 原発棄民 フクシマ5年後の真実(毎日新聞出版)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「原発棄民」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、毎日新聞の記者であり、以前、書評をした「原発避難白書」(該当する記事は、こちら)の執筆者の一人である。

本書は、著者が原発事故についての取材を始めたのが、2014年10月であるため、それ以降の内容が中心であるが、政府・福島県の担当者への取材を中心に、政府の真意を明らかにしていこうという点が特徴である。結論としては、政府の真意は、「原発避難をとにかく早く終わらせる」(184頁)ということになろう。日本政府の政策は、まさに、書名のとおり「原発棄民」であり、敗戦時の旧満州に多数の国策移民を置き去りにした中国残留孤児・中国残留婦人問題を生じさせたときから何も変わっていないというのが、悲しいかな、結論となろう。

本書では、「自主避難者の生活に対して世間が抱く誤解」として、①多数の賠償金を受け取った(実際は、少額の一時金が支払われただけ)、②住宅(無償で居住できるのはメリットでもなく、特に母子避難者は二重生活になり、負担が大きい)が挙げられている(60頁)が、このような目線は、被災者とばかり接するとだんだん気づかなくなるものなので、盲点を気づかせてくれる面もある。

当職も、福島原発事故被災者の損害賠償請求訴訟に携わっているが、国や東電に責任をあいまいにして、被災者を棄民にするのを許さないように頑張っていきたいという決意を新たにしました。また、原発事故以外の事件も親身に取り組んでおりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年3月 7日 月曜日

[書評]吉田千亜 ルポ 母子避難 - 消されゆく原発事故被害者(岩波新書)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「ルポ 母子避難」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、フリーライターであり、以前、書評をした「原発避難白書」(該当する記事は、こちら)の編集幹事の一人である。

原発事故被害者の中でも、母子避難した被害者の方を中心に当事者の話が厚く盛り込まれている。特に、「自主避難者」と呼ばれる区域外避難者の問題を中心に取り上げている。もっとも、東京電力が原発事故を起こし、放射能を広範囲にまき散らかしたために、避難を強いられているのだから、「自主」的ではなく、強いられた結果なのだが、この問題を論じだすと本来の書評がどこかへ行ってしまうので、ここでは、便宜的に一般に用いられている「自主避難」という語を用いることをお断りする。

当職は、原発事故被害者の賠償問題にも関わっているが、巡りあわせもあり、旧緊急時避難準備区域と呼ばれる福島第一原発から20~30キロメートルの区域の担当案件が大多数を占めている。そのため、本書のように、自主避難者の特色が具体的に分かる書籍は、現在、原発事故被害者が分断され、国の失政によって分断を強いられ、苦しみを増幅させられていることを感じさせられる。「自主避難者たちは、避難の『正当性』や『合理性』を地震で説明しなければならない場面にたびたび立たされてきた」(100頁)などは、自主避難者であるがゆえの特色である。

日本政府の政策は、まさに「自主避難者は棄民」(211頁)するという政策であるが、平成24年8月で賠償を打ち切られた旧緊急時避難準備区域の者も棄民されており、避難指示の解除が進むにつれて、棄民が増えている状況にある。

当職も、福島原発事故被災者の損害賠償請求訴訟に携わっているが、少しでも、原発事故被害者に寄り添えるように頑張っていきたいという決意を新たにしました。また、原発事故以外の事件も親身に取り組んでおりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年2月29日 月曜日

[書評]新公益法人制度研究会編著 一問一答 公益法人関連三法(商事法務)



1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「一問一答 公益法人関連三法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、平成18年に一般法人法等が成立した際に、立法担当者が新たに制定された同法を解説した書物である。既に制定から8年、施行からも6年が経過しているが、現時点で、一般法人法や公益認定法について、この書物より詳細に説明している書物は、当初の知る限りない。その意味で、現在でも、この分野を調べたいときに役に立つ書物である。一般法人法の概要は、民法の基本書にも記載されているが、細かい話になると、現在でも、この本が一番頼りになるという状況である。

一般法人法等は、「改正前民法に基づく社団法人及び財団法人についての許可主義を根幹とする主務官庁制を廃止し、法人格の取得と公益性の判断を分離するという基本方針の下、①剰余金の分配を目的としない社団又は財団について、準則主義により簡便に法人格を取得できる一般的な法制度を創設し、②この一般社団法人または一般財団法人のうち、公益認定の申請をした者の中から...公益を認定する事業を適正に実施し得る公益法人を認定する制度等を定め」た(はしがきⅲ頁)たものであるが、その機関設計は、準則主義を採用したこともあり、かなり会社法の規律に類似しており、果たして、剰余金の分配を目的としない社団又は財団についての制度として適切なのかと疑問を感じるところはあるが、この書物は、学者による基本書ではなく、あくまで立法担当者による解説なので、そのような根源的な疑問には答えてくれるものではない。
しかしながら、制度の解説という意味では、詳細なことは確かであり、その意味では、頼りになる書物である。

林浩靖法律事務所では、常に最新の情報をキャッチアップするとともに、周辺分野も含めて知識を深めるように、日々、研鑚に努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年2月22日 月曜日

[書評]伊藤真監修・伊藤塾著 伊藤真実務法律基礎講座5 民事執行法・民事保全法(弘文堂)



1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「伊藤真実務法律基礎講座5 民事執行法・民事保全法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の監修者・著者は、以前、書評をした「伊藤真の条文シリーズ3 会社法[第2版]」(該当する記事は、こちら)と同じであり、本書も同じく弘文堂から出版されている。

本書は、実務に出るとオン・ザ・ジョブトレーニングが中心になるが、その経験が価値あるものになるようにするために、法律の全体像をつかむことを目的とするシリーズの民事執行法・民事保全法である。「設例、確認問題、図表、各種書式などを多く示すことにより、具体的なイメージを持って理解できるように工夫」(はしがきⅢ頁)している。民事執行法・民事保全法の書物では、設例、図表や各種書式を掲載している書籍は一定数みられるが、確認問題まで掲載しているのは、さすが受験指導校が作成した書物と思える点である。確認問題の掲載は民事執行法に限られるが、理解度を確認しながら読み進めることができ、「民事執行法・保全法を専門的に勉強する際の基本書への橋渡しとしての役割」(はしがきⅢ頁)を果たすことができるように工夫されている。

ただ、惜しむらくは、以前書評をした中野貞一郎名誉教授の「民事執行・保全入門(補訂版)」(該当する記事は、こちら)と同じく、民事保全法の記載が薄すぎることである。ただ、この点は、民事保全法をきちんと記載している書物の方が少ないので、基本書を参考に書籍をつくっている受験指導校が作る以上、仕方ないと割り切るしかないであろう。

先週も述べたように、民事執行・保全は、処理の正確性が要求されるものの、細かい問題が多く、しかもイメージは沸きにくいという怖い分野です。林浩靖法律事務所では、きちんと問題点を把握して、万全の処理を期しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年2月15日 月曜日

[書評]水野丈夫・浅島誠共編 シグマベスト 理解しやすい生物[生物基礎収録版](文英堂)



1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「シグマベスト 理解しやすい生物[生物基礎収録版]」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は高校生用の学習参考書であり、以前書評をした「シグマベスト 理解しやすい政治・経済」(該当する記事は、こちら)と同じシリーズである。編者の両名は、東京大学名誉教授であり、記述のしっかりしている書物である上、図表も多く、基礎から発展までカバーしているので、高校生物を復習する上では、使いやすい一冊である。はしがきでは、「原理もわからず、ひたすら『覚えよう』とするのはおろか」(1頁)と述べて、読者に「生命現象をよく『理解する』ようにしてください」(同1頁)と述べる。

実際、丁寧に説明されており、情報量も相当に多く、「理解」させることに努めている書物ではある。高校生時代、生物を選択しなかった当職でも通読することはできた。ただ、本書は、「章末には『章末練習問題』を、編末には『定期テスト予想問題』を入れて、これを解くことで学習内容の理解度を自己診断できる」(2頁)としているが、収録されている問題数は少なく、基本的には、理解用、あるいは、辞書用に使う知識系の参考書であり、問題集は、レベルに応じたものを、別途、使用しないとなかなか定着しないだろう。

そうはいっても、知識の説明はしっかりしている良書だと思う。バイオテクノロジーの説明(296頁)など、実社会との関係も説明されている。

高校生のときには感じませんでしたが、社会に出ると、高校生レベルの知識は、全分野、きちんと身につけておけばよかったと感じることがあります。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、そのバックグラウンドを押さえて業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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