所長ブログ

2016年4月18日 月曜日

[書評]佐藤優 危機を覆す情報分析~知の実戦講義「インテリジェンス」とは何か~(角川書店)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「危機を覆す情報分析~知の実戦講義『インテリジェンス』とは何か」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、以前、書評をした「新・帝国主義の時代 左巻 情勢分析篇(中央公論新社)」(該当する記事はこちら)、「世界史の極意(NHK出版新書)」(該当する記事はこちら)、「同志社大学神学部(光文社)」(該当する記事はこちら)の著者である、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏である。

本書は、「基本的に国家の仕事」(22頁)であるインテリジェンスについての書物だが、インテリジェンスにおいて、「大切なのは基礎知識」(33頁)であるため、後半は、教養のみにつけ方を解説するものとなっている。
「理解ができない、訳が分からない事態が起きていても必ず合理性があります。合理的に説明できないときは、知識が不足しているか、あるいは切口が間違えているか、その両方か、そのいずれかと捉えるべきでしょう。」(41頁)という部分は、何事にも当てはまると思う。そして、物事を理解するためには、基礎知識が必須ということになる。「中学三年から高校二年ぐらいまでの学びが、教養の基本形」(101頁)であるから、「今の自分の欠損箇所を素直に認めて、そこからスタートすること」(127頁)が勉強法の要諦ということになる。
高等学校レベルの基礎知識、アンカーとしての古典(181頁)を押さえることを心がけたいと思う。

弁護士という仕事は、依頼者の皆様のために頑張るのは勿論ですが、生じているトラブルは社会情勢が反映される面があります。法律以外の点についても、基礎事項をきちんと学んでおりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、正義を守る法律事務所である東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所 | 記事URL

2016年4月11日 月曜日

[書評]川戸昌・二宮加美編著 近代文語文問題演習(駿台文庫)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「近代文語文問題演習」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

先日、書評を行った出口汪「現代文講義の実況中継②(改訂版)」(語学春秋社)(該当する記事は、こちら)にて、近代文語文の読み方を学んだので、問題演習を行うことにした。「明治期の文化人たちが工夫して作った『新しい論理的文章』」(3頁)で、「現代の論文・評論文の土台」(3頁)になっている近代文語文であるが、大学入試での出題は、非常に限られていることもあり、近代文語文の読み方を練習できる書物は少ない。というか、ほぼ、本書一冊といっても良い状況にある。

本書の編著者は、共に、駿台予備校の国語科講師であり、本書は、「一橋大学・早稲田大学・上智大学の過去の入試問題とサンプル問題とで構成」(4頁)されている。「近代文語文は、『このように近代化はあるべきだ』という論調を基本」(4頁)としており、「日本近代化史」(4頁)を示すものといえる。本書では、森鴎外の「洋楽の盛衰を論ず」から、山田孝雄「国語の中に於ける漢語の研究」までの14の文章を取り上げて、全訳や文法解説も行いながら、解説している。取り上げられている問題文の著者も、西周、福沢諭吉、幸田露伴、坪内逍遥、徳富蘆花、中江兆民、永井荷風、夏目漱石と重要な者ばかりであり、近代文語文の読み方を身に着けるだけでなく、教養としても読んでおくべき著書がそろっていると言える。加えて、重要と思われる5つの文法ポイントについても、コーナーを設けての解説がなされており、現在のところ、近代文語文の読み方を身に着けるという観点では、ほぼ唯一の使える書物と言える。

法律の世界では、一部の大審院判例は今でも生きているが、それは戦前の文章であるから、近代文語文に近い形態で書かれている。近代文語文の読み方を身に着けることは、業務でも役立ちことといえる。また、森鷗外、夏目漱石、福沢諭吉、中江兆民の文章などは、教養として当然、押さえておくべきものであろう。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、教養を身に着け、社会のためという確固たる信念を持って業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所 | 記事URL

2016年4月 4日 月曜日

[書評]出口汪 現代文講義の実況中継②(改訂版)(語学春秋社)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「現代文講義の実況中継②(改訂版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、以前書評をした「現代文講義の実況中継①(改訂版)」(語学春秋社)(該当する記事は、こちら)の続きということになる。この書籍は、全3巻のシリーズで、本書は第2巻にあたる。

第1巻は、文書を論理的に読むことを教えてくれる非常により書物であったが、続きに手を付けていなかったのは、別に大学入試を受けるわけではないし、仕事に活かすうえでは第1巻を押さえておけばよいだろうと思っていたからであるが、考えを変えて第2巻も読もうと考えたのは、近代文語文(明治擬古文)の読み方も身につけたいと考えたからである。実際、大日本帝国時代の判例(といっても、重要なものは大審院の一部の判例に限られるのだが)は、明治擬古文に近い文体である。

そして、本書では、後半で、「現代文の文章の中に、古文、漢文、もしくは和歌が入っている」(110頁)融合問題の読み方や、明治擬古文の読み方を扱っている。

また、「要約作業に含まれる二つの要素」として、①長い文章を縮める、②整理することが述べられている(120頁)が、これは、準備書面などの裁判書面や企画書の作成などにも通じるところがあり、ビジネスパーソンにも有益である。

しかも、言語論などにも触れられており(47頁)、教養を身に着けることにもつながる。

勿論、本来は、大学受験用の書物なのだが、ビジネスパーソンが読んでも有益な書物だと思う。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、教養を身に着け、社会のためという確固たる信念を持って業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所 | 記事URL

2016年3月28日 月曜日

[書評]丸山真男 「文明論之概略」を読む 上(岩波新書)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「『文明論之概略』を読む 上」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、言わずと知れた大塚久雄、川島武宣と並び称される社会科学の巨頭である。本書を薦められたのは、確か、当職が司法試験に合格した前後だから、約15年前のこととなる。上中下巻に分かれており、本書は、上巻で読み解きの対象となっている福沢諭吉「文明論之概略」の巻一、即ち、第3章までを扱う。著者は、「原典を必ず目の前に置いて読んでいただきたい」(まえがきⅰ頁)と述べているが、原典が文語文であることもあり、横着した若き日の当職は読んでもなにも理解出来なかった。今回は、原典も購入しての再読になる。

本書の中で、一流の政治学者であった著者は、「古典を読み、古典から学ぶことの意味は-すくなくも意味の一つは、自分自身を現代からから隔離すること」(9頁)とし、思想的古典に向き合う際に重要なのは、「先入見をできるだけ排除して虚心坦懐に臨む」(13頁)ことと「『早呑込み』の理解」(17頁)に陥らないように注意すべきこと、「どんな思想家の場合でも、その思想家の研究に必要なのは、その人物の思想の中核となる言葉やフレーズは何かということ」(103頁)など、古典を読む際の注意事項もちりばめられている。

文明開化の進展と開国直後の独立維持という2つの問題の狭間で、「自分の幕末から維新にかけての体験による実感と問答し」ながら(150頁)洋書を読んだ福沢諭吉の主著である「文明論之概略」を、当代一流の学者であった著者の導きで読むということは、古典を読むということのトレーニングにもなると思う。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、教養を身に着け、社会のためという確固たる信念を持って業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所 | 記事URL

2016年3月21日 月曜日

[書評]萩原遼 朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀(文春文庫)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「朝鮮戦争 金日成とマッカーサーの陰謀」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、元赤旗記者で、平壌特派員も務めたことのある人物である。かかる著者が、赤旗退職後に、ワシントンの国立公文書館所蔵の北朝鮮からの奪取文書を通覧して、「今の南北朝鮮の問題を解くカギ」(11頁)である「朝鮮戦争の真の姿を朝鮮労働党、朝鮮人民軍、人民共和国政府などの内部文書によってまとめた」(9頁)書物である。

北朝鮮という秘密主義の国の情報は限られているため、謎であった部分に光を当て、「北の人民軍が開戦直前にどう移動し、どこにどう配置されていたか」(201頁)を突き止め、「朝鮮戦争は北側が周到な準備のすえに謀略的に南側に武力攻撃を加えたもの」(10頁)であることを明らかにしている。北の文書によって証明しているところがポイントであると考える。

そして、「朝鮮戦争という数百万人もの人命を失った悲劇のおこりを調べていくうえで、その悲劇のそもそもはどこなのか、ということになると、やはりソ連軍の北朝鮮占領と、朝鮮人民になんの足場も持たないソ連軍の子飼いのキム・ソンジュがつれてこられた事実をさけて通るわけにはいかない」(58頁)という認識から、ソ連による北部朝鮮の占領以降の朝鮮戦争の前史も、「ソ連による二十万トンのコメの供出命令」(70頁)など詳細に描き出している。

著者の分析は、「マッカーサーの米極東軍司令部はすべて中国革命の進展とそれに鼓舞された金日成の動きにあわせて動いていた」(294頁)として、「金日成が隠密にすすめてきた朝鮮戦争の陰謀は、マッカーサーの極東米軍によって一年前からことごとくつかまれていて、かれらの大謀略に完全に利用された」(10頁~11頁)という結論に至る。この視点に提示も重要であると考える。

朝鮮半島は、日本から最も距離の近い隣国であることは、好き嫌いの問題とは別であり、否定のしようがない。そして、朝鮮戦争は、極東史において重要なエポックである。

林浩靖法律事務所は、法律に限らず、教養を身に着け、社会のためという確固たる信念を持って業務しておりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

投稿者 林浩靖法律事務所 | 記事URL

カレンダー

2024年2月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29