所長ブログ

2016年5月23日 月曜日

[書評]森田章 上場会社法入門(第2版)(有斐閣)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「上場会社法入門」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、同志社大学教授で、会社法・金融商品取引法を専門とする。本書は、2010年の著作なので、当然のことながら、会社法の2014年改正をはじめとする法改正には対応していない。
ただ、そのようなことで、本書の価値が失われるとは思わない。本書は、「会社法による公開会社に関する規制だけでは、上場会社などが実際の企業活動を行っていることに対する規制の在り方を考えることはできない」(はしがきⅱ頁)という認識の下、「金融商品取引法の諸原理を会社法と関連づけて説明」(はしがきⅱ頁)しており、金融商品取引法も含めた上場会社に対する法規制を論じる際の体系を示している書物だからである。現実の会社法実務では、商業登記も大きな役割を果たすので、出来れば、商業登記法まで関連付けられればより良かったが、それでも、会社法と金融商品取引法を併せて体系化しているという点で、有用な書物である。その後の法改正は、適宜に位置付けれれば足りるのである。

林浩靖法律事務所では、関連する法分野については一体的な理解に努め、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

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2016年5月16日 月曜日

[書評]佐伯仁志・道垣内弘人 刑法と民法の対話(有斐閣)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「刑法と民法の対話」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、刑法を専門とする佐伯仁志東京大学教授と民法を専門とする道垣内弘人東京大学教授のお2人である。2001年の著作なので、話がやや古くなっているところもあるが、「民法学と刑法学の交流のきっかけとなることを第一次的な目的」とする対談(はしがきⅰ頁)を基にした著作であり、専門化が進む中でこのような分野横断的な書物は珍しいので、今でも十分に参照する価値のある書物であると考える。

現実の事件処理では、特定の法分野だけを気にして処理をすることはできず、複数の分野に目配りして処理をしなければならないことも多い。そして、「刑法と民法が交錯する法律問題は多々存在するのであり、お互いにお互いを理解しながら、矛盾のない法体系を構築すべきである」(358頁)にもかかわらず、現実には、それぞれの分野だけを考えたとしか思えない文献が多く、実務処理をしようとすると頭を悩ませることが少なくない。「民法と刑法の双方を理解した上で、双方の交錯する問題を検討することは、学界でもまだまだ不足している」(358頁)のである。

本書は、刑法と民法が交錯する問題についての双方の専門家の対談であり、統一的な理解のきっかけになることが記されている。また、それだけでなく、例えば、「検察官を信頼して任せておけばすべてうまくいく、という発想は、多くの事案で実際にもうまくいっていることを否定しませんが、刑法理論のあるべき姿には反しています」(146頁)というような刑法理論の基盤に関する指摘や、「民法の教科書が『犯罪行為に該当するような契約は無効である』というときには、おそらく、国家的法益や社会的法益に対する罪をまず念頭に置き、さらには、個人的法益に対する罪に該当するような行為について、行為者と第三者が契約をするということを考えてきた」(267頁)というような民法の教科書の書かれざる前提を示すなど、民法や刑法に関する知識や視点も含まれている。

林浩靖法律事務所では、法的事務について、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

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2016年5月 9日 月曜日

[書評]原田尚彦 行政法要論(全訂第七版[補訂二版])(学陽書房)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「行政法要論」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、行政法学者である原田尚彦東京大学名誉教授である。「本書は、比較的短期間に行政法を習得する人びとのための研修用テキストないしその副読本として、初学者にも容易に理解できるよう、できるだけやさしく行政法理論一般の解説を試みたもの」(はしがきⅰ頁)であり、長年、公務員試験の行政法の基本書として用いられることの多かった書物である。

本書の最終の改訂は、2012年になされたため、その後の法改正は反映されておらず、例えば、2013年に廃止された独占禁止法の実質的証拠法則の話が残っている(410頁など)箇所などもあるが、それでも、本書の有用性は失われるものではない。本書は、「各人が現代にふさわしい行政法理論を各自の頭で創造し形成していく訓練をつむことが、日常の行政実務の改善に役立つばかりでなく、行政法学の発展のためにも、重要」(はしがきⅰ頁)という観点から、行政法の考え方を説明する書物だからである。

林浩靖法律事務所では、行政法に限らず、常に基本を押さえて検討するように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年5月 2日 月曜日

[書評]除本理史 公害から福島を考える-地域の再生を目指して(岩波書店)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「公害から福島を考える」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、以前書評をした「福島原発事故賠償の研究」(日本評論社)(該当する記事は、こちら)、「原発災害はなぜ不均等な復興をもたらすのか」(ミネルヴァ書房)(該当する記事は、こちら)の編著者の一人である大阪市立大学大学院経営学研究科の除本理史教授である。

本書は、「福島原発事故由来の放射能汚染はいまや国内『最大の環境問題』」(1頁)という観点から、公害事件の教訓を踏まえて、福島第一原発事故を考えようという書物である。ただ、「被害者救済の前提は『被害の実態把握、原因の究明と責任の明確化』」(103頁)であるにもかかわらず、福島第一原発事故の場合、そもそも被害者数さえ正確に把握されておらず、責任を負うべき東京電力株式会社と国は、責任の曖昧化に腐心しているのが実情である。本来は、「賠償と復興過程を対立的に捉えるのではなく、復興を進めながら、なお残る被害に対して適切な賠償を実施すべき」(177頁)でありながら、政府と東電は、賠償の打切りをどのように行うかしか考えていないように思われる。

本書の著者が、主に、川内村と飯館村の状況を中心に研究しているため、被害地域の全てに同じ議論が成り立つと言えるかには疑問の残るところもあるが、福島第一原発事故の「損害」が何かを考える上で有用な書物であることは間違いない。本書で得た知識も生かして、これからも原発事故被災者のために頑張りたいと思います。

また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年4月25日 月曜日

[書評]中野貞一郎 民事裁判入門(第3版補訂版)(有斐閣)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「民事裁判入門(第3版補訂版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者は、以前、書評をした「民事執行法(青林書院)」(該当する記事はこちら)の共著者(原著者)で、「民事執行・保全入門(補訂版)(有斐閣)」(該当する記事はこちら)の著者である、中野貞一郎大阪大学名誉教授である。

初版はしがきにおいて、著者は、「本書は、民事裁判の『入門』であって、いわゆるファースト・ステップの本ではない」(はしがきⅳ頁)と述べているが、確かに初学者がいきなり読んでも、あまり効果があるとは思えない。この本が一番役に立つのは、基本的事項は学んだはずなのに、イメージが湧かない学習者だろう。あとは、司法修習生が民事裁判手続の全体像を確認するのにも有用かもしれない。
本書は、「現実の裁判例をもとにし」たケース(4頁)を多数収録して、読者にイメージを湧かせながら、「円環的構造をもつ」(はしがきⅳ頁)民事訴訟法を、「家事事件の手続に関する1章」(はしがきⅱ頁)として、「12 家庭紛争と裁判」(343頁以下)を設けるなど、民事訴訟法に限らず、民事裁判全体を概観させている。民事訴訟法を初めて学ぶ初学者が読むのは厳しいとしても、一定の学習をしたものが、民事裁判手続全体を概観するには有用なものとなっている。

弁護士の仕事において、民事事件はその中核を占める業務です。もちろん、離婚事件などの家事事件も多数あります。林浩靖法律事務所は、基礎事項をきちんと学んでおりますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、正義を守る法律事務所である東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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