所長ブログ

2016年8月19日 金曜日

[書評]裁判所職員総合研修所監修 刑法総論講義案(四訂版)(司法協会)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「刑法総論講義案」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、裁判所職員総合研修所が出している裁判所書記官の研修用の刑法総論の解説書である。「実務家を養成するための教材として、学説の細かな紹介・検討よりも、むしろ判例・実務の基本的動向を理解させることに重点を置いて、基準を展開」(はしがき)するものであり、学説の対立が激しい刑法総論において判例・通説の立場から一貫して論じる本書は、実務的な観点から刑法総論を学ぶには有益である。

この本の旧版は司法試験の受験勉強の際も利用し、現在でも有益な書籍である。今回の改訂では、近時、因果関係の判断に際し有力な考え方となっている「危険の現実化」についても加筆され、しかも、「具体的な事実関係を丁寧に把握した上で、行為の危険性の程度・性質や発生した結果への寄与度、介在事情の性質や発生した結果への寄与度、行為と介在事情との関係の有無や程度等を踏まえて、被告人の実行行為の危険性が発生した結果に現実化したと評価できるかを検討しなければならず、その際検討すべき問題は、従来の相当因果関係説に基づいて因果関係を判断する場合と重なり合う部分も少なくない。」(96頁~97頁)など、一般の基本書には記載されていないが、重要な指摘もなされているので、司法試験などの試験勉強にも向いているだろう。ただ、共犯に関する記述が薄いので、実務書としては十分なものであるが、理論的処理が要求される問題も出題される試験対策としては、共犯の部分をどのように補うかが、この本を利用するときの課題となると思う。

刑法は、刑事事件において絶対に押さえておかなければならない法律です。林浩靖法律事務所では、民事事件に比べてウェイトは低いですが、刑事事件も取り扱っています。お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年8月12日 金曜日

[書評]原井龍一郎・河合伸一編著 実務民事保全法(三訂版)(商事法務)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「実務民事保全法(三訂版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、大阪弁護士会の弁護士による「実務家の視点にたった民事保全の体系的概説書」(三訂版の刊行にあたって1頁)であるが、概説書としては600頁弱あるので、分量が多い。しかしながら、書式等は掲載されておらず、使いどころの難しい書物である。もっとも、「民事保全制度の全般にわたって解説」(読者へ5頁)されており、文書自体は分かりやすいので、時間のある司法修習生が読むにはいいかもしれない。

ただ、民事保全法は、全体的に書籍が少なく、一定レベルの概説書なので、手許には置いておきたい書物である。

民事保全をきちんとしておかなければ、訴訟係属中に状況が変わり、民事訴訟で勝訴しても無意味なものになりかねない。そのため、民事保全の知識はきちんと押さえておく必要がある。

林浩靖法律事務所では、広く目配りして情報を収集し、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

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2016年8月 5日 金曜日

[書評]小林秀之・山本浩美 新論点講義シリーズ5 担保物権法・民事執行法(弘文堂)


1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「新論点講義シリーズ5 担保物権法・民事執行法」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書の著者両名は、民事手続法が専門で、山本教授は、小林教授のお弟子さんにあたる。本書は、「従来の担保物権の教科書は、手続法との関連が必ずしも十分に説明されておらず、実際の手続が分からない平板な説明になっていた」(はしがきⅲ頁)という認識の下に、「債権回収法という視点から、担保物権法と同時に民事執行法の基礎を説明し、実体法と手続法を立体的に学べるように工夫」(はしがきⅲ頁)されたテキストである。

確かに、一般的な担保物権法のテキストは、業務で参照しようとすると、現実に可能なのかという疑問が生じる点があったり、分かったようで分からない部分が残ることも多かった。

本書は、実体法と手続法が結び付けられているため、腑に落ちる説明や現実的な説明になっている箇所も多い。少し変わった視点のテキストだからこそ、よく分からないことが腑に落ちる部分がある。

林浩靖法律事務所では、既存の知識を別の視点からも常に見直しつつ、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年7月29日 金曜日

[書評]桜井淳 新版 原発のどこが危険か 世界の事故と福島原発(朝日新聞出版)


本書の著者は、技術評論家、物理学者であり、本書は、福島第一原発事故直後に、新版として出版された。朝日選書の一冊をなすものである。

「本書の大きな特徴は、・・・原子力発電所における『非常用電源喪失事故』の危険性を強調したことになった。いささか重視しすぎたかとの懸念もあったが、今回の福島事故は、不幸にも、この私の警告が極めて正当であったことを示した」(3頁)という認識の下、1995年に刊行された旧版に、福島第一原発事故に関するあとがきを追加して出版された書物である。

本書は、「議論をできるだけすっきりさせるため、対象は、米国製軽水炉と旧ソ連製軽水炉」とする(11頁)ものの、「世界の安全問題からすれば、旧ソ連製黒鉛減速チャンネル型原子炉(いわゆるチェルノブイリ型原子炉)をむしすることはできない」(11頁)として、軽水炉と旧ソ連製黒鉛減速チャンネル型原子炉についての世界の事故を分析する書物である。

本書では、「今の判断基準では、結果的には事故・故障を過小評価する傾向がある」(19頁)、「国民の安全を守るという視点が完全に欠落している」(19頁)、「小児がんは続発している。被曝事故の被害は、交通事故などと異なり、晩発性である」(121頁)、「安全よりも電力の安定供給が優先されたり、事故の本当の原因が政治的にぼかされてしまったり、事故の責任がすべて現場の末端管理職や担当者に押し付けられてしまうなど、程度の差こそあれ、日本もまったく同じ状況」(122頁)、「事故の教訓は、世界的に全く活かされていないことがわかる。原発の弱点は、十分に認識されているにもかかわらず、一向にそれを克服できず、何度も同じことを繰り返している。これは、いまの原発の安全管理における最大の欠陥である」(186頁)など、福島第一原発事故で露呈した問題点が多く網羅されている。

そして、本書は、「世界の原子力政策に与える衝撃という点では、福島のほうが遥かに上回る」(221頁)ことを、福島第一原発事故からわずか2週間で指摘している。

そして、本書の指摘するように、「水力や火力、メタンハイドレート、風力や太陽光・・・。さまざまな選択肢に環境保全や省エネルギーの課題を絡めながら、これから半世紀や一世紀の射程で、展望を考えていかなければならない課題となった」(222頁)。そして、この課題は、事故から5年経っても解決していない。

当職も、福島原発事故被災者の損害賠償請求訴訟に携わっているので、事故前の知見として活かせないか考えていきたいと思います。また、原発事故以外についての情報も、常にキャッチアップするように努めていますので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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2016年7月22日 金曜日

[書評]裁判所職員総合研修所監修 民事保全実務講義案(改訂版)(司法協会)

1冊書評をしたいと思います。今回、書評をするのは、「民事保全実務講義案(改訂版)」です(本記事は書評なので、この後は、「です」、「ます」調ではなく、「だ」、「である」調で書きます。)。

本書は、裁判所書記官の研修用に、「民事訴訟手続において実現されるべき権利等をあらかじめ保全することを目的とする」(1頁)民事保全制度の概略を示す書物であり、本文82頁にまとめられ、それに主要保全命令主文例集が加えられている書物である。

本文わずか82頁の書物であるから、細かい点の解説など全くなく、入門書としても不十分なレベルとは思われるが、逆に言えば、本書の内容が理解できないようであれば、業務として民事保全を行うことは、おそらく無理であろう。そのくらい、基本的な部分のみが解説されている書物である。

林浩靖法律事務所では、広く目配りして情報を収集し、お客様に常に満足できる最良のサービスを提供させていただく所存ですので、何かお困りのことがありましたら、ぜひ、東京・池袋所在の林浩靖法律事務所にご相談ください。

弁護士 林 浩靖

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